「きっと誰もが、ファースト・シーンを観直すことでしょう!!」第3逃亡者 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
きっと誰もが、ファースト・シーンを観直すことでしょう!!
ラストシーンを観終わって、最初のシーンを観ました。
やはり男は、まばたきを2度、3度と繰り返していました。
1937年。イギリス時代のヒッチコック監督作品です。
ヒッチコックお得意の「巻き込まれ型スリラー」
そしてラブコメ要素のあるサスペンスです。
ふと思ったんですが、チャップリンのサイレント映画を偲ばせるシーンが
チラホラとあります。
主人公のロバート(犯人の嫌疑をかけられる青年)が失神するシーン。
警察署長の娘エリカは介抱に飛んできて、頬っぺたを引っ叩くやら、耳を引っ張るやら、
過剰に介抱(笑)
エリカは介抱好きなのか、ラストで失神した犯人も介抱に駆けつけます。
ロバートがオデコを怪我した時も、エリカは家外の水道の蛇口から水をかけて洗うのですが、
蛇口の水の蛇口が上を向いてて、強くひねるとものすごい勢いで上に跳ねてロバートは
めちゃくちゃ水浸し。
このシーンも過剰な位に水が跳ねます、何回も何回も。
そして犯人の顔を知る男ウィル。
ラストのボールルームのシーン。
ウィルは暇を持て余して、エリカとダンスをします。
その足の動き・・・チャップリンの足みたいに足を上げ下げして笑わせてくれます。
たった84分の映画なので、多少説明不足かしら?
ファーストシーンに犯人の顔はバッチリと写ります。
男はホテルの部屋のバルコニーから下を覗きます。
下は黒々した海水が濁流のようにうねっています。
ここで私は殺害した犯人は、クリスチーヌ(女優)をベランダから投げ落としたか?と、
思ったのですが、これは多分違います。
死体はビーチに海水帽子をかぶり水着を着て横たわっています。
たしかに死体は水を被っていますが、朝早くに運んで水際に置かれたのだと思われます。
死体の脇には絞殺に使ったらしいベルトがご丁寧に置かれている。
(これも死体と一緒に投げ込まれたのなら、こんな近くに落ちてる筈がありません)
その結果、ベルトの持ち主と思われる第一発見者のロバートが疑われるのですが、
さて第一容疑者にされたロバート。
(本来ならホテルにクリスチーヌと一緒にいた夫が一番に疑われるはずなのでは)
それでロバートは盗まれたコートとベルトを必死に探します。
犯人は殺人の事前にロバートに罪を着せるために、ロバートのコートを盗み、そこからベルトを奪い
殺害時にわざわざベルトを使用したことになります。
(犯人はクリスチーヌ殺害計画をかなり以前から、計画していたことになります)
でも、そんなことをウジウジと重箱の隅をつつくのは野暮と言うもの。
次々と迫るピンチをエリカとロバートは、鮮やかにクリアして行きます。
空き家に隠れるロバートにサンドイッチを差し入れしたり、お金を返したり、
追って来た警官を巻いて、さらに逃走。
古い炭鉱の大きな穴に、車ごと落っこちるスペクタルなシーンも、見どころです。
エリカとロバートが次第に心を通わせ意識し合う様子も、ほのぼのとして楽しい。
そしてウィルが面通しするために3人で訪れるホテルのボールルーム。
ここでのワンシーン・ワンカットはこの映画の名物シーンです。
広いボールルームをとらえたロングから、舞台で演奏する顔を黒塗りしたドラマーの、
まばたきする目のクローズ・アップまでを、ワンショットで寄るクレーン撮影の効果。
今ではワンカット・ワンシーンと歌われる映画は多いけれど、そう見せかけてる事が多い。
ヒッチコックは1937年には、正真正銘のワンカット・ワンシーンを実践してるのですね。
息詰まる緊迫感が、演出されています。
コメディ色の強い楽しいラブコメ風のサスペンス映画。
ロバート役の青年がなかなかの美形でしたね。
中型犬とヒッチコックも出演して、後味最高ですね。?
琥珀糖さんはヒッチコック作品かなり観られてますね、嬉しいです!この作品はイギリス時代の代表作だと思うんですけど、同じく「三十九夜」もおススメです!!この「第3逃亡者」と同じマデリーン・キャロルという女優さんが出演してらっしゃいます!!すでにご覧になってたら申し訳ないですが