劇場公開日 1979年8月11日

「傷だらけの自由」旅芸人の記録 manamboさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0傷だらけの自由

2015年10月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

旅芸人は、自由を求める精神のメタファーだろう。
1939年から1952年まで、軍事独裁政権下のギリシャの歴史を、旅芸人一座の眼を通して描いた素晴らしい映像の作品。ドイツによる占領、イギリス軍駐留と傀儡政権、内戦、アメリカの露骨な政治介入。旅芸人達は一貫して政府に弾圧され蹂躙される。舞台で殺され、投獄され、凌辱され、拷問され、殺される。それでも芝居を続けてゆく。
苛烈な獄中の拷問を瀕死で生き延びた芸人が振り絞った言葉に深く共感した。「傷だらけの自由に希望を持て!」

この映画が撮られた74年当時も、独裁制下で思想を自由に表現できる時代では無かった。アンゲロプロス監督はそこにかつて軍事独裁政権に右翼政権が取って代わった52年と同じ臭いを嗅ぎとり、その歴史を描くことで、パラレルに74年当時の“今”を批判したのだ。

manambo