「木を見て森を見ず」カリスマ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
木を見て森を見ず
前半部分は木を守る桐山(池内博之)と伐採しようとする中曽根(大杉漣)との対立の構図。どことなくファンタジー色も強く、刑事の職を追われて森に迷い込んだ薮池(役所広司)や医者の神保(風吹ジュン)とその妹(洞口依子)が絡んでくる。
カリスマと呼ばれるその木を巡っての対立は、アイドル的なカリスマなのか、宗教における神の賜物なのかよくわからないが、森全体と一本の木のパワーバランスの象徴のように思えた。実際、何のために守ってるのか、何のために伐採しようとしているのかも掴めないまま物語は進む・・・黒沢っぽい。
ついに双方のバランスが崩れ、中曽根一派が木を持ち去り、それを奪い返す桐山。さらに神保姉妹がそれをまた奪っていくという意味不明の展開。戦争と平和といった世の中の縮図のような光景ではあったが、カリスマ=権力の争奪戦の中で薮池が平凡でありたいと願うように変化するところも興味深い。
そんな全体像は見えてくるのに細かなところで意味不明で残酷な行動もあり、やっぱり作品そのものは掴みづらいのだ。燃え尽きたかのようなカリスマだったが、薮池はもう一つあった(と信じてた)カリスマを守ろうとする。結局、神の賜物は人間が創り出したモノ。それが争いの種になり、全体から見ても神聖であり邪悪であるという両面性があるものだな~などと、勝手に解釈してしまいました。人によって色々違ったとらえ方が出来る、奥の深い内容でもありました。
コメントする