ジーンズ 世界は2人のために : 映画評論・批評
1999年11月15日更新
1999年11月27日よりシネセゾン渋谷にてにてロードショー
世界に飛び出し、ますます楽しさ満開★のデジタル・マサラ・ムービー
「ムトゥ 踊るマハラジャ」で日本人がようやくインドの娯楽映画=マサラ・ムービーの面白さを知り、大騒ぎしていたとき、ハリウッドはすでに香港に続く才能の宝庫としてインドに目をつけ、未開拓の巨大市場を視野に入れて活動を開始していた。その最初の成果 が、インド映画史上最高の製作費をかけ、初の本格的インド=ハリウッド合作映画として世界制覇を狙うこの作品。
とにかく、やることなすことすべてが大胆かつ壮大で、ゴージャスにしてナンセンス。“世界一の美女”としてインドでナンバーワンの人気を誇る94年ミス・ワールドのアイシュワリヤ・ライが、万里の長城、エジプトのピラミッド、自由の女神、グランド・キャニオン、エッフェル塔といった世界の名所旧跡で見せる華麗なダンスは映画的快感の極致。まるで喜怒哀楽のジェットコースターのような大河ロマンチック・コメディは普通 の映画数本分の満腹感。要するに、「ウエストサイド物語」に「クレオパトラ」を足し、「渡る世間は鬼ばかり」と「8時だヨ!全員集合」を掛け、「アメリカ横断ウルトラクイズ」と「兼高かおる世界の旅」で割ったようなとてつもない映画というわけ。
「ムトゥ」とは一味違う衝撃と興奮で、インド映画の底なしのパワーを感じさせると同時に、インド映画が世界に向けて歩きだした足音が確実に聞こえる快作だ。
(江戸木純)