「【”あんなにも崇拝していた警察だったのに。”或る男が夢を持って入った警察だが長年蔓延っていた悪人から賄賂を貰う事が横行していた。一人賄賂を受け取らず孤独だが信念を持って行動する男の姿が響く作品。】」セルピコ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”あんなにも崇拝していた警察だったのに。”或る男が夢を持って入った警察だが長年蔓延っていた悪人から賄賂を貰う事が横行していた。一人賄賂を受け取らず孤独だが信念を持って行動する男の姿が響く作品。】
ー エンドロールで流れるように、ニューヨーク市警の腐敗に立ち向かった刑事の実話に基づく骨太な社会派ドラマだそうである。-
■警察学校を卒業したばかりのフランク・セルピコ(アル・パチーノ)は正義感に燃えていたが、警察内部の腐敗を知り、自身だけが賄賂を受け取らない事で次第に孤立していく。
セルピコは不正を訴えるべく告発に踏みきるが、逆に市内で最も危険な場所といわれるブルックリンの一画に配属されてしまう。
◆感想<内容に触れています。>
・構成の妙に惹かれる作品である。
ー 冒頭、血だらけのセルピコが救急車で搬送されるシーンから、一転して彼が警察に巡査として採用されるシーンが映される。
警察のお偉いさんの訓話”治安に携わる君たちには道義的、社会的、政治的に重大な責任がある。・・・礼儀正しく、尊厳を持って、又、公正に振舞う事により一般市民の敬愛の念を喚起しなくてはならない。”(資料より)を、真面目に聞く若きセルピコの姿が印象的である。-
彼の姿を誇らしげに見る両親の姿。
・だが、セルピコは警察に入り、その博打屋から金を巻き上げる姿を見て、ひとり懊悩しつつ、自らの道を突き進むのである。
例え、ガールフレンドに愛想を尽かされて、逃げられようとも。
・セルピコが二番目のガールフレンド、ローリーに言った言葉は忘れ難い。
”小さな頃、近所で事件が有ったんだ。何が起こったのか分からずに色んな人に聞いていた時に、警官が現れたんだ。それまで、人だかりがあった中を青い服を着た警官が中に入って行く時に人混みが割れたんだ。まるで紅海のようにね。”
・セルピコは署を盥回しになり中で、警官らしくない髭を蓄えたヒッピーの様な格好をしながら、手柄を立てていく。
だが、彼はその手柄を独り占めにせず、場合によっては同僚に花を持たせる。
ー 彼が、表彰を受けたいがために行動していない事が良く分かる。-
・頭に来るのは、デップリ太った署長を始めとした、甘い汁を吸っていたNY警察の上層部の姿である。セルピコを上手くおだてながら、一切彼をサポートしない姿。
・そして、病院で意識を取り戻したセルピコに与えられた金のメダル。だが、彼はそれを受ける事を拒否するのである。
■今作では、大仰な音楽は流れない。
ドキュメンタリータッチと呼んでも良い抑制した画の作りの中、セルピコが唯一信頼するブレアの助力を借りながら、警察の腐敗を明らかにすべく裁判に臨む姿。だが、彼に下された非情なる異動の指示。
それは、NYの中でも危険と言われる地域への異動だった。
<今作は、幼き頃警察に憧れたセルピコが、愚直なまでに賄賂を貰わずに、”巨悪であった”NY警察の暗部を明らかにしようと、奮闘する姿が沁みる作品である。
アル・パチーノは、年代的に劇場で観たことが無いが、ゴッドファーザーシリーズを観ても、稀有な俳優である事が良く分かる作品でもある。>