「ゴダール、時代の申し子の死産」ウイークエンド きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴダール、時代の申し子の死産
Wikipediaによると
「雑誌『プレミア』が選んだ「もっとも危険な25本の映画」(The 25 Most Dangerous Movies)の1本に選ばれた。」
のだそうだ。
本作は、フランスの五月革命の最中に製作上映されて、
世界でも日本でも、あらゆる怒りの矛先がいったい何処に向けられれば良いのか、社会全体が暴発していた頃の、特別の時代のものだ。
僕の小学校は大学の正門の横にあった。
そのため、バリケードストライキと、ヘルメットと、ゲバ棒と、投石と、火炎瓶と、ジグザグ行進と、機動隊と学生の熾烈な攻防を見ながらの登下校だった。
公務員も交通も一切を巻き込んでのゼネラルストライキも経験したし、
夜通し4000人の“暴徒”が米兵のナンバープレートの車を82台、ひっくり返して、路上でガソリンを掛けて丸焼きに焼き討ちにした事件も体験している。
両親とともに催涙ガスと放水と銃剣から逃げて川に転落し、靴を片方失くし、
顔が血だらけの女の人を見ながら裸足で歩いて帰った。
渋滞。警笛。挑発。叫び。アジテーション。
黒煙をあげて燃える車 々々々と 血だらけの人々。
そして火だるま。
これ、
狂気など何処にも無い
静寂な光景ではないか。
騒音がすればするほど無声映画のように映像が鮮明に見えてくる。
自分が見てきたそのままの姿だった。
脈絡の無い、サイケな映画かと思って見始めてのいきなりの、僕自身のフラッシュバックだった。
産み落とされたものは声を上げたか?
ゴダールはこの映画を出したあと、長い休眠に入る。
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