「最期までぼくらしく生(逝)きたいから」ぼくを葬(おく)る kakerikoさんの映画レビュー(感想・評価)
最期までぼくらしく生(逝)きたいから
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フランソワ・オゾン監督作品は色々観て来ましたが、今作が一番好きかもしれません。「まぼろし」に続いて、描こうとしているテーマは人間の「死」。
若手カメラマンでゲイのロマンは末期がんで余命3ヶ月と宣告されてしまいます。彼は(祖母を除く)家族や愛する人に口外することなく、彼なりの別れ方を実践していき、それから、自分なりに残された日々を悔いなく(突如行きつけの店員に依頼されたあることを最期のほうで決意するのですが)できるだけ、心地よく死というものを迎える準備をしていくわけです。
美しく、やるせなく、穏やかに、迎い入れるその時まで。一筋の涙がこぼれ落ちるようです。きらきらと輝く海辺、静かな波の音に包まれながら、最後に人は自然というものに溶け込みたくなるのだろうかと考えさせられるような終わり方。
個人的には今まで私が鑑賞した「イン・トゥ・ザ・ワイルド」や黒澤明監督の「生きる」はたまた、「最期の授業」というやはり死期を知っている大学教授の講演本などがわぁ~っと脳裏をかすめました。皆、共通するのは「能動的な生き様」ということです。尊厳死という言葉の意味が昨今、問われるようになりましたが、この主人公のような死に方はまさしく「どう生きるか」には「どう死ぬか」が包括されているという、人間のテーマの行き着くところを秀逸に描き出しているものと思いました。私の理想とする死がここにはありました。好きな作品です。
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