タイムマシン : 映画評論・批評
2002年7月15日更新
2002年7月20日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー
オスカー脚本家が古典テーマに挑む珠玉SF
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(C)2002 Warner Bros. & Dreamworks, LLC
あまりに有名なH・G・ウエルズの古典SFの再映画化だが、原作のアウトラインのみを借りて、オリジナル・テーマを持たせた所がミソ。でも、VFXやアクションに過大な期待は禁物。むしろ見所は「グラディエーター」でアカデミー脚本賞を受賞したジョン・ローガンの脚色の妙技にある。
人はなぜタイムマシンに憧れるのか? それは過去のやり直しが可能になるからだ。だが、本当にそれは必要なのだろうか。「もしも、あの時、こうしていたら」。その「もしも」に賭けて、主人公アレクサンダー(ガイ・ピアース)は寝食を忘れてタイムマシンの研究に没頭する。なぜなら、彼は最愛の人を失い、彼女を取り戻したかったからである。ところが、タイムマシンは彼の望む「もしも」を叶えてくれない。なぜなんだ。アレクサンダーはその答を探して、今度ははるか未来へと向かう。ところが、80万年後の未来で彼は未来人モーロックから、あっさりと答を教えられてしまう。
大事なのはその答ではない。「もしも」という投げかけは、過去に向けられるものかどうかが大事なのだ。タイムマシンは人類にとって必要かどうか。脚本のローガンはその解答をラストに用意する。心優しく、そして力強い希望を与えてくれる珠玉のSF作品である。
(岩井田雅行)