「復讐を遂げたら幸せになれる訳ではない世の無情を描き切れぬレヴィンソン監督の演出」スリーパーズ Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
復讐を遂げたら幸せになれる訳ではない世の無情を描き切れぬレヴィンソン監督の演出
ロレンツォ・カルカテラのベストセラーを「レインマン」のバリー・レヴィンソンが演出。今年の豪華キャストの話題作。主演がジェースン・パトリック(「ハスラー」の名脇役ジャッキー・グリースンの孫と知って驚く)、共演がロバート・デ・ニーロ、ブラッド・ピット、ケビン・ベーコン、そしてダスティン・ホフマン、子役ではジョセフ・ペリノー、ブラッド・レンフローと揃っている。少年院で看守たちから受けた虐待と性的暴行の復讐を、殺害・摘発・マフィアの罠などによって、しかも殺人罪では神父の偽証で無罪を勝ち取る形の離れ業を貫徹する。ラストのクレジットでは、このような事実は認められないとの司法側の発言に対して、原作者カルテラの反論をわざわざ付け加えるところを視ると、レヴィンソン監督の信念強い制作意図は明確である。しかし、本編の子ども時代の4人の少年と神父の触れ合いを美しく描いてはいるが、ワンカットの思い入れが薄いシーンの連続で人物の表情が描き切れていない。故にラストの法廷のクライマックスが余韻に乏しい終わり方になってしまった。主人公のモノローグも全編に入れるのではなく、最初とラストのみで良かったのではないか。その方がドラマティックな物語の展開に引き込まれるし、最後に残る復讐を遂げた人間が幸せになれないこの世の真実、人生の無情観を見詰めることが出来るのではないだろうか。演出力の点では、この作品のレヴィンソン監督に評価は与えられない。演技ではデ・ニーロが最も優れて、パトリックは少年の繊細さを見せたペリノーに及ばず個性的魅力が足りない。ピットは役柄に合っているが、ホフマンはその巧さを見せつけるシーンも台詞も与えられず、全く生かされていない。駄目弁護士の法廷での哀れで可笑しい姿を描けたなら、少しは厚みが出たであろう。もっといい映画になるべき題材である。