「良かったのは反乱を起こすまで」スパルタカス Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
良かったのは反乱を起こすまで
総合:60点 ( ストーリー:80点|キャスト:60点|演出:55点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
奴隷の立場の不条理さは面白かった。壮大な話だし、奴隷制を絡めて一人の男の波乱の人生と社会構造を描く物語は良かった。
だが悪い部分が非常に多い。まず映像について。いかにも作り物の建物や、撮影所の室内に作られた美術を使って大きな風景の絵を背景にしての外の場面の撮影は、すぐに偽物とわかるし古さを感じてしまって映像には満足できない。反乱から派遣された敵の歩兵部隊との戦闘は、戦いそのものの場面がかなり省略されていて殆ど戦闘の映像はなく、歴史物としては全く迫力に欠ける。結末近くには相当に金をかけたであろう大量動員した大規模な場面もあるのに、その動きを遠方から映すだけで戦闘場面が殆ど無いのにはがっかりする。これでもアカデミー撮影賞を受賞しているが、とても褒められたものではない。
物語の展開についても良くない。奴隷を解放してかなりの人数を集めておきながら、どうやって彼らを食わせていったのかとかどうやってまとめていったのか、そんな描写がないのにも満足できない。ローマ側の描写にいたっては、殆どが宮廷と屋敷内での話し合いだけで全てが説明的に描写されるだけ。そしてローマ中に反乱が起きたとかたくさん戦死したとか語られるだけで、実際のそのような場面は映し出されない。
結局、3時間超えの大作でありながら、どんな場面が必要なのかがわかっていないし時間の使い方がまるでなってない。削るべき場面はいくらでもあり、必要なはずの場面もいくらでもある。その結果として、中弛みのする深みの無い作品になってしまった。これでは物語の良さを生かすことが出来ていない。キューブリック監督でもこの程度のものかとがっかり。