「一筆書きのような、シンプルで鮮やかな映画」単騎、千里を走る。 mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
一筆書きのような、シンプルで鮮やかな映画
チャン・イーモウ監督の一筆書きのような、シンプルで鮮やかな映画。
ストーリーはあるが、高倉健という人物ドキュメンタリーのよう。高倉健の無骨で、不器用で、曲がったことが嫌いで、実はとても暖かい人柄がそのまま映画になっている。
監督チャン・イーモウは高倉健とただ一緒に仕事がしたくってこの映画を作ったようだ。凄い芸術作品を作ろうなんて微塵もない。ただ一緒に作りたいだけ。観客はそのおこぼれとしてその仕事の結果(映画)を見させてもらっているようなもの。それで観客もチャン・イーモウと同じような気持ちで、健さんの魅力にはまってしまう。
ストーリーをよく練ったというものでなく、設定もある意味いいかげん。出てくる人物は、健さん以外中国側は、まったく素人のよう。それがいい味になることを、ちゃんとチャン・イーモウは確信(計算)していた。観客はうまく乗せられた格好だ。こんなスカスカな設定、脚本でも鮮やかな感動を残す映画になっていることに驚く。
日本側のシーンは、それに比べ、堅くてあまり魅力がない。日本側監督は降旗康男、キャメラは木村大作(絵柄は、中国とのコントラストをつけるためか、堅くて色を押さえた映像)。でも、「お竜さん(藤純子)」の娘(寺島しのぶ)が健さんの息子の嫁なんて、チャン・イーモウは、本当に健さんファンなんだなと思えた。
これを劇映画と呼べるのか?ちょっと思うが、なかなかチャーミングな映画でした。
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