SWEET SIXTEEN : 映画評論・批評
2002年12月16日更新
2002年12月28日より銀座シネ・ラ・セットほかにてロードショー
「ケス」のケン・ローチ監督が久々に英国少年を活写
素材を吟味する。そのうえで、素材のよさを極力活かして仕上げる。そんな映画の作り方もある。舞台は、スコットランド、グラスゴー近郊の港町。主人公のリアムはじめ主要登場人物の殆どは俳優ではなく、演技経験もない人々。それでいて描かれる物語は決してドキュメンタリー的ではなく、普遍性を備えている。
英国出身のケン・ローチ監督は、近年舞台を自国以外の土地に移していたが、今回は英国北部が舞台、しかも代表作「ケス」(69)以来久々に、主人公は少年だ。
もうすぐ16歳のリアムは、社会生活も出来れば、アタマも悪くない、普通の少年。彼の当面の願望は、もうすぐ刑務所から出所する母と、別居している姉と甥との家族団欒。ここで当然、さまざまな障害が彼を阻むのだが、それは、お小遣い稼ぎがするりと組織犯罪に繋がってしまうといった社会情勢だけではない。たとえば、彼の願望は彼の愛する母の願望と一致しない。幼なじみの親友は、彼より知力も胆力も劣るゆえに、いっしょにやっていくことができなくなる。
もうすぐ16歳の男子が、何かを決意した堅い表情で立っている。英国北部、曇り空の田舎町。この風景に何か感じるものがあるなら、この作品はきっと気に入る。
(平沢薫)