「胸を打つ切なさが感動を呼ぶ」初恋のきた道 ルイスさんの映画レビュー(感想・評価)
胸を打つ切なさが感動を呼ぶ
久方ぶりにDVDを借りて観る。忘れていたシーンや発見もあり、新鮮だった。
父が亡くなり、一人息子が母の待つ故郷の村に帰るところから始まる。父は小学校の教師で40年間教えていた、古くなった学校を立て直すために奔走していた時に吹雪の中で倒れたことが村長達の話で解る。そして心臓が悪かったことも。村長は、病院から遺体を引き取り、村で葬儀を行うつもりだが、母が昔からの風習で担いで村に返すという。しかし、村には年寄りと子供ばかりで人出が無く、無理だと息子は母を説得するように頼まれる。学校の前で座り、動かない母を家に連れて帰り、諦めるように言うが、母は頑として受け付けない。家で息子は母と父の若い頃の写真を眺める。
こんな始まりだが、現代の部分が白黒で、回想シーンがカラーなのである。普通は逆に使うのが常識だが、この方が回想シーンがこの映画の見所だと主張していて解りやすい。
都会からやってきた若い教師ルオ・チャンユーに恋して、その想いを伝えようとする18歳の少女チャオ・ディ。文盲のディは手作りの料理の数々にその想いを込めて彼の弁当を作った。やがてその気持ちに彼も気づき、いつしか二人の心は通じ合う。しかし、時代の波「文革」が押し寄せ二人は離れ離れに。少女は町へと続く一本道で愛する人を待ち続ける……。そんな彼女の想いは村中の知るところとなる。村人の応援により、村始まって以来の恋愛で結ばれたカップルになる。
後半で、また現代に戻り、隣町から人を雇い母の願い通りに担いで村に返すことを決意する。隣町から37人を雇い、5000元を村長に渡して依頼する。しかし、実際には、それを聞きつけた教え子達が中国全土から集まり、その数100人を超える。その伝統の葬列が感動を呼ぶ。さらに、もう一つの感動シーンがあるがそれは観てのお楽しみだ。
最初に観た時の印象は、中国の田舎ならではのゆったりとした時間の流れを感じ、あくせくとした日常との余りにも違う世界に驚いた。チャン・イーモウが同時期に撮った「あの子を探して」も同じ空気感が漂う。他にも監督は違うが「山の郵便配達」なども同じ空気感を感じる。