劇場公開日 2004年5月1日

「受難とは何を意味するのか」パッション(2004) mamemameさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0受難とは何を意味するのか

2023年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

難しい

二千年の間にPassionの1単語、漢字なら2文字に縮められたキリストの受難は本当はこういうものであったということをリアルに突きつける問題作。
「イエスは人間の罪を背負って、甘んじて磔刑を受け入れました。そしてそのあと復活しました。おしまい。」と今なら簡単に子供に聞かせるお話が、本当はどんなにむごたらしく、残忍で、「これが人間の原罪なのか」とショックを噛みしめる映画になっている。
年月で薄められた原点を賦活化する試みだが、見る人を選ぶ。

人間の根本は残酷で粗野で、モーセが十戒でわざわざ「殺すな」「盗むな」「犯すな」と書かなければ諫められなかったほど。
イエス・キリストがその原罪を肩代わりして死ぬことで、人間の罪が贖われたという解釈になっているけど、そんな簡単なことじゃない。覚悟していたイエス当人でも最後に「神よ、神よ、なんぞ我を見捨てたまいし」と天に嘆き、信仰が揺らぐほどの仕打ち。
それをしっかり描かなければそれを超えた存在の真価も表せない。

そんな前提を知らなかったとしても、見た人はこの映画から学ばなければいけない。人間はどういうもので、何をしたのかを。
目を背けるな、と首に突きつけられたナイフが、この映画。
この映画への評価は、そのまま自分自身の評価になる。真正面から受け止める力の無い人は、残酷表現に流されてしまい、その奥にある真意を評価できないだろう。

mamemame