バッドランズのレビュー・感想・評価
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保安官が言う「ジェームズ・ディーンに似てる」というのは顔だけじゃないんだな・・・
ストーリーテラーはホリー(スペイセク)。バッドランド=モンタナへの旅へと導く自分たちのモノローグ。最初はゴミ集配人の仕事をしていたキット(シーン)。無気力だが、ある程度真面目に仕事をこなす若者。なぜかクビになってしまったキットは職安に向うが、生きる目的も薄いので、人のいやがる牛舎の仕事にも不満じゃなかった・・・。知り合ったばかりのホリーにも、カウボーイになれると自嘲気味。ホリーはジェームズ・ディーンに似てるキットに徐々に惹かれていった。娘が不良と付き合ってると知って父親(オーツ)は怒り、娘の飼っていた犬を撃ち殺してしまう。おかげでキットが父親を殺しても、父に対する感情は静かだった・・・
死体をそのままにして家に火を点け、最初にたどり着いた場所では、人里離れた川のほとりで、木の上に小屋を作り暮らし始めた。そして、彼らの前に現れる賞金稼ぎや目撃者を次々と殺し、モンタナへとあてのない逃避行を続ける2人。最後はあっさりと捕まってしまった。
モンタナの荒涼とした土地がキットの心象風景とダブり、かなり心に残る作品。面白いとか感動するとか、そんな映画では一切ない。多分、朝鮮戦争へと出兵した経験があることを窺わせるが、そこで人を殺すことを何とも思わない感情が植え付けられたのだと想像できる。凶暴でもないし、犯罪者の顔でもない。ごくごく普通の青年の顔を持ち、自分が死ぬことを怖いとも感じない精神の持ち主。保安官や軍隊を相手にしても友達感覚でしゃべる姿も印象に残る。
【2012年ケーブルテレビにて】邦題:『地獄の逃避行』
不思議。自分は常人なので頭がオカシイこの作品の主役に感情移入は出来...
不思議。自分は常人なので頭がオカシイこの作品の主役に感情移入は出来ないが、かといって他の作品みたいに見るのが苦痛で早く終わって欲しいとは思わなかった。なぜだろう。演出の腕と言ってしまえばその通りなんだけどつまらない結論。まるで同じ人間の行動を追う様に普通に描いてるのがいいのか、雄大だったり牧歌的だったりする画と音がそうさせているのか。不思議。
マリック伝説第一章
伝説の監督テレンス・マリックの1973年のデビュー作。
強く惹かれ合うキットとホリーの若い男女。しかし、ホリーの父親に交際を反対されたキットは、衝動的にホリーの父を殺してしまう。二人の当てのない逃避行が始まる…。
実話を元にした作品。
テレンス・マリックと言うと、詩的な美しい映像と哲学的な内容が特徴。
本作では、まだストーリー主体。
貧しい身ながらもただ純粋に愛し合う若い男女。
が、大人はそれを理解しようとしない。
純粋な愛が狂おしい愛へとなり、若者は過ちを犯し、暴走する。
行く先々で無軌道な愚行を繰り返す様は弁護のしようがないが、破滅へ向かう姿は哀しい。
おそらくこの二人の愛の形は、一時だけ激しく燃え上がるタイプだろう。その始まりも終わりも唐突。
愛は時に残酷。
あちこちに後のマリックの片鱗も垣間見える。
心情を語ったナレーション、印象的な音楽、そしてアメリカの広大な土地の美しい映像。
ただの犯罪逃走劇+ラブストーリーとは違う雰囲気を醸し出す。
当時、この監督が映画史上稀にみる寡黙作家になるとは誰が予期しただろうか。
キットとホリーに扮するのは、若き日のマーティン・シーンとシシー・スペイセク。
破滅的なカップルを鮮烈に体現している。
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