「彼女を狂わせたのは、境遇か、性(さが)か、愛か…」モンスター(2003) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
彼女を狂わせたのは、境遇か、性(さが)か、愛か…
シャーリズ・セロンがアカデミー主演女優賞に輝いた衝撃のドラマ。2003年の作品。
シャーリズが演じるのは、アイリーン・ウォーノス。
7人の男を殺害し、2002年に死刑が執行された実在の連続殺人犯。
それだけ聞くと悪名高いが、彼女とて最初は違った。
幸せな生活や女優を夢見る女の子だった。
しかし、現実は甘くなかった。
最低最悪の環境で、体を売って生きるしかなかった。
そんな絶望的な状況の中、同性愛の少女セルビーと出会う。
強く惹かれ合い、激しく求め合い、人生に初めて光が差す。
セルビーの為に堅気になる事を決意し、就職活動をするが、体を売って生きてきた彼女に社会は冷たかった。
再び、体を売るしかなかった。
一人の客を捕まえるが、暴力的な客で、身を守る為に殺してしまう…。
映画はアイリーンとセルビーの関係を軸に進む。
同性愛の少女と愛し合うアイリーンだが、彼女も最初から同性愛者ではなかったハズ。これまで彼女の周りに居た男共はクズゲスばかりで、唯一、セルビーだけしか信じる事が出来なかったのだろう。
恵まれぬ境遇は同じ。共に抜け出し、幸せを掴もうとする。
が、もがけばもがくほど堕ちていく。
セルビーとの生活を続ける為に、アイリーンは殺人を重ねる。
ここから彼女は狂っていく。それは、追い詰められていく精神のせいか、それとも純粋過ぎる愛のせいか…。
無論、アイリーンの大罪は絶対に許されない。厳しいが、死刑も妥当だろう。
ただ、アイリーンの生き様は胸が痛い。そう堕ちて生きるしか術が無く、たった一つの愛にすがるしかなかったのが、哀しい。
美人女優の代名詞であるシャーリズが、体重を増やし、ブスメイクを施し、嫌悪感すら感じさせる壮絶演技は圧倒的。
シャーリズも素晴らしいが、相手役クリスティナ・リッチも素晴らしい。(シャーリズはオスカー穫ったのに、クリスティナはノミネートすらされなかったのが信じられない)
二人の女優の熱演と、愛と哀しみの衝撃の実話にKOされる。