「ただのボクサー映画ではない」ミリオンダラー・ベイビー スパイダーマンさんの映画レビュー(感想・評価)
ただのボクサー映画ではない
この映画の構造を考えると、完全に2つに分けられると思います。前半と後半で、ムードもテーマも全く異なる。もちろん一貫している部分もありますが、そういう意味では本当に多くを訴えかけようとする映画だなと思いました。
マギーがフランキーの指導で腕を上げていくのが最高でした。相手を一瞬でKOしてしまうシーンなんか、正直スカッとしましたよね。何があっても諦めない、そんな姿が描かれています。
マギーとフランキーの出会いは本当に運命的でした。マギーは家族のことをずっと想っていたけれど、その想いは結局一方通行だった、それはフランキーの娘への想いと同じです。フランキーが本当に途中からマギーのことが娘のように思えてきて、そのように愛す姿が描かれていましたが、本当にその点はこの映画の魅力的なところの1つです。
徐々に心を開いていくフランキーが、愛らしいというか、人間らしくてよかったです。
イーストウッド自身にもたくさんの娘がいるので、彼女らもしくはその中の誰かのことを想ってそんな脚本を書いたりしたのかなどと想像したりしました。
そして、マギーは事故に遭うわけですが、、まぁとてもとても、、最後まで悲しい物語です。
ああいう時って、主人公は必死に強く生きようとしたりするのですが、この映画の場合はあっさりと自らの命を絶とうとしてしまいます。でもそこから、マギーの人生が見えてくるんですよね、、。
「モ・クシュラ」の意味を聞いたマギーは本当に嬉しそうでしたが、間際のあの笑顔が、悲しくも印象に残りました。
またフランキーが神父に、自分はマギーに対してどうするべきか問うシーンがありましたが、そんなところから安楽死の是非を問いかけてもいるような気がしました。
イーストウッドが監督と主演をしているこの作品。彼のメッセージが色んなところに表れている作品だと思います。