「チームものの良さが描けていない…。」ロード・オブ・ドッグタウン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
チームものの良さが描けていない…。
実在したスケートボード集団「Z-boys」を題材にした伝記映画。
チームの生みの親であるスキップを演じるのは『ヒース・レジャーの恋のからさわぎ』『ブラザーズ・グリム』の、後のオスカー俳優ヒース・レジャー。
製作総指揮を務めるのは『セブン』『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャー。
2021年開催予定の東京オリンピックから正式種目となるスケートボード。この機会にスケボー映画を鑑賞!
舞台は1970年代のカリフォルニア州ヴェニスビーチ。
そこで生まれたスケートボードチームが「Z-boys」。
全世界で巻き起こるスケートボードブームの火付け役らしいです。
スケーターの間では有名な人たちなんだろうか?
「Z-boys」の中心メンバーだったトニー、ジェイ、ステイシー、エドの4人に焦点を絞り、彼らの掴んだ栄光と葛藤が描かれている。
はじめはただ好きな事が出来るだけで満足だったはずなのに、過分な成功を収めた結果、友情にヒビが入り、それぞれ別々の道を歩むようになる…。
チームやグループが描かれる作品にはありがちな物語ですが、栄光の日々からの転落、そして最後に残された希望とは何か、という普遍的なシナリオはやはり観るものの心を掴む。
しかーし、この映画にはチーム崩壊もののカタルシスがない!
というのも、それぞれのキャラクターの破滅的な振る舞いや蛮行、三角関係などの不和を描くことに終始するあまり、Z-boysというチーム自体の描写が希薄であるように感じられるからだと思う。
映画の序盤でスキップが街の不良たちを集めてチームを結成。練習を積み大会に挑む。
この序盤はこれから盛り上がる雰囲気がプンプンして良かった。
しかし、そこからチームでのまとまった描写がなくなり、主に主要人物4人だけにクローズアップすることで映画は展開してゆく。
4人は勝手に他人の庭に忍び込み、水のないプールで好き勝手に滑りはじめる。
これは「プールスケーティング」という、その後のスケボー文化の革命とでもいうべきプレイのようです。
これを描写したかったというのはわかる。Z-boysを描くにあたり絶対に避けられないものなんだというのもわかる。
でも、それとは別に監督のスキップを含めてもっとZ-boysというチームの一体感や活躍を描いて欲しかった。
チームが描けていないうえ、Z-boysはいつの間にやらスター集団になっており、成功へのプロセスを楽しむこともできない。
監督は4人の人間関係を重点的に描こうとしたのだろうが、やはりこの題材ならもっとZ-boysというチームとスケートボードという競技をしっかりと描いて欲しかった。
有り余るパワーをスケボーにぶつけるという、若者たちの青春ストーリーとしてもっと感動的な映画にもなり得たと思うのだが、実にもったいない…。
自分のようにスケートボードに興味がない人間には少々退屈かもしれない。
終盤になるまで主人公たちの顔と名前が一致しなかったのは映画のせい?それとも自分のせい?