ライフ・イズ・ミラクルのレビュー・感想・評価
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日本なんて鉄道だらけ
この世は舞台であり、人は皆役者なのた。『お気に召すまま』
そんな事、100も承知の助なんだけど、肝心なのはその舞台は一回しか上映されず、主役は絶対に自分だと言うことだろうね。
『男は箱舟を作り、指ひとつで海を割り、万里の長城も作った。でもしかし、戦争はするし、NATOを作る。そして、歴史も憲法も詩も書ける』と結ぶ。さてさて彼女は続ける『でも、全ては女あってこそ。女心をつかむのは一番難しいこと』と。さてさてこれをどう受け取るか?
『いくら知的に生きても、何も証明できないのさ。理論止まりで』
すると中佐が『あの戦火の後には、もう理論なんか無い』
奥さんが返す『うちは家よ。あそこじゃ無い。』
『全部気分だ。あそことは関係ない』と主人公が閉める。
さてさてこの会話。
『あそことは』映画の中では具体的に言っている。たんぽぽの種子が舞う。まるで、戦火の後の灰燼の様だ。
ラストシーンは『小さな恋のメロディ』『雪国』『スタンバイ・ミー』そして、一番大事な『バルタザールどこへ行く』もう一つ大事な事。クール・ジャパンを代表する作家芥川龍之介の『トロッコ』だろうね。
『ベオグラードまでの切符は二枚いらない』それが、ジュリエットの人生の終焉。
その後は親父ロミオの人生の顛末。そして笑って、ロミオの幕が下りる。ロミオとジュリエットは悲劇ではない。持っているのは『DONKEY』と先に行っていた彼女。夏しかないオーストラリアで。
「アンダーグラウンド」以上に身近な題材だったはずだが…
「アンダーグラウンド」までは 順を追って私の評価を上げていた クストリッツァ監督作品だったが、 「黒猫・白猫」で肩透かしを食らい、 心配しながらの当作品の鑑賞となった。 設定は、始まるはずのない戦争が いつの間にか身近になったという、 昨日までは 仲良く隣近所で暮らしていた者同士が、 違う民族だと言うことだけで、 今日は殺し合っているとの 旧ユーゴの内戦ニュースを思い出す。 作品の中で貫かれているのは 主人公の妻や息子への想い、 そして、人質の娘を愛するようになるのは、 民族の違いを超えても 理解しあえるはずだったのに、との想いの 象徴なのだろうが、 いかんせん話が膨らみ過ぎて、 シュールさの羅列も甚だ過ぎて まとまりに欠けた印象だ。 題材は第二次大戦を背景とした 「アンダー…」以上に、監督には 時代的に身近な題材だったはずだが、 不必要に長尺化してしまった感があり、 名作「アンダー…」には 遠く及ばなかったように思えた。
【バルカンミュージックに乗せて、同一地域に住む異民族の愚かしき争いを描いたシニカルコメディ。エミール・クストリッツァ監督の、民族間の諍いを越えた愛を描いた人間賛歌の作品でもある。】
ー 自称”ユーゴスラビア人”のエミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」や「オン・ザ・ミルキー・ロード」では、鵞鳥、牛、猫、馬など多数の動物が登場する。 今作で、最も多く、重要なシーンで登場するなは“ロバ”である。 御存じの通り、ロバには”愚か者”と言う意味と、”辛抱”という意味があり、今作ではそれが暗喩として、効果的に使われている。- ■1992年、内戦勃発直後のボスニア。鉄道技師・ルカ(セルビア人)は、兵隊に取られたサッカーを愛する息子ミロシュが敵側の捕虜になったことを知る。 そんな中、息子の捕虜交換要員である女性・モスリム人のサバーハを人質として預かることに。奇妙な共同生活を送るうち、ルカと彼女の間に愛が芽生えていく。 ◆感想 ・大作「アンダーグラウンド」で、ユーゴスラビアの解体過程を物凄い皮肉を込めて描いたエミール・クストリッツァ監督。 今作では、ボスニア紛争を同じ視点で、シニカルユーモアと民族間の壁を越えたルカとサバーハの愛に落ちる過程を描いている。 ・ドッカンドッカン、降り注ぐ爆弾の中、ルカは友人とチェスをし、連れて来られた異民族のサバーハを優しくもてなす。 ・そして、数度、効果的に描かれる、線路上に佇むロバの姿。 ・登場人物は相変わらず、超個性的でありながら、内面には善性を持った人物として描かれている。 <今作は、エミール・クストリッツァ監督の、同一地域に住んでいたのに、民族が違うだけで争う事への怒りと、民族間の諍いを越えた愛を描いた人間賛歌の作品なのである。>
"MILICA"
忙しない人間模様が繰り広げられ家畜と言う名の動物たちや陽気な音楽が所構わず鳴り響く楽しげな世界観。 クストリッツァが描く戦争は、悲惨さや哀しみを内包しながらも陽気に楽しく時には滑稽に生きる人間をコメディかのように表現した反戦映画を撮り続けている稀な映画監督だと思う?? ボスニア紛争が勃発した過酷な状況を生き抜く人々や動物たち、そんな弱者をコミカルにキャラが強い人物像で描くからこそ、哀しみだけを中心に描いたらあまりにも悔しすぎるでは無いか!? 全てを悟ったような物哀しい表情が印象的なロバのミリチャは救世主のような存在に思える。
クマ、ロバ、犬、猫、ガチョウ、馬、etc. 予備知識を何も持たずに観ると、最初はクマ退治の映画なんじゃないかと思ってしまう。
『アンダーグラウンド』を見逃したままになっているので、この映画の正当な評価を下すことなんて出来ないんじゃないかと思っていました。しかも前半部分では、ノー天気な鉄道マニアのルカ(スラヴコ・スティマチ)とサッカー選手の息子ミロシュ(ヴク・コスティッチ)とおとぼけな仲間たちが登場する緩いギャグ映画かと感じたのですが・・・なめてかかってました。息子が徴兵にとられ、ボスニア紛争が激化するにつれ、ルカのおとなしい内面が爆発寸前にまで昂ぶっていったのです。
平和なブラスバンドの演奏と鉄道模型。戦禍もなかなか及ばないような山奥の村。民族紛争や政治色を前面に出さず、家族や友人を大切に想う男に突如襲いかかってきた戦争を描写する。ルカにとっては犬と猫との争いのようなものだったのかもしれない。さすがにクマが意味するものは敵だったのかもしれないが、敢えて追求する場面を少なくしていたのかもしれない。それほど平和的な男のもとへ息子が敵の捕虜になったと知らせが届き、代わりに相手国の看護師サバーハ(ナターシャ・ソラック)を預かることになった。
息子とサバーハの捕虜交換のために同居していただけなのに、二人に愛が芽生えた頃から、感情が激しく揺れ動く。逃亡のためとはいえ、人を殺してしまうという人生の汚点をも経験するが、数日間のうちに人生の浮き沈みを全て味わうこととなり、絶望の後、自ら死を選ぼうと線路に横たわるルカであった。トロッコ、車、列車といった乗り物や、郵便配達人や実父の面白キャラ。まるで神の使いであるかのような意思を持った動物たち。全てがルカに奇蹟を与えるために生き生きと映りました。
【2005年12月映画館にて】
「まさしく人生讃歌!」な動物映画
「アンダーグラウンド」で正真正銘、みんなの度肝を抜かした旧ユーゴスラビア・サラエボ出身のクストリッツァ監督は、今作でもまずは娯楽に徹してます。ちなみに邦題は無冠詞のミラクルですが、英題や原題はちゃんと「a」や「un」がついてます。ここが本作を観るに当たって失望しないための注意点。 切ないラブコメと呼ぶのが適切なのでしょうが、そこに戦争が絡み、話は尋常でなくなってきます。それなのにこの人の映画に出てくる登場人物は相変わらず天然。開き直った天然さとでも言うのだろうか、本当にこの人の映画の登場人物は、もっと恵まれた環境にいる日本人からすれば焦るくらい天然なのです。そしてそこにいつも通り、なんともいい味だした動物が出てきます。特に、今作のヒロイン(?)のロバ、さいこーです。 「アンダーグラウンド」の最後の奇跡は、まさしく映画史上空前の奇跡でしたが、今回の奇跡はそれほどでもない。でも、こんな奇跡はひょっとしたら毎日みんなに起きているのかもしれませんね。
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