劇場公開日 2006年12月9日

「ゲイのためなら、王をも泣かす~♪「玉の男」と間違えないようにしてください。」王の男 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ゲイのためなら、王をも泣かす~♪「玉の男」と間違えないようにしてください。

2021年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 キャッチコピーは「それより奥は、見てはならない」である。当時公開された日本映画『大奥』への挑戦状とも感じ取れるのですが、暴君ヨンサングンやその宮廷内を描くというよりも旅芸人の二人があくまでも主人公なのです。それでも暴君の描写は興味深いもので、世間を知らないマザコン王という雰囲気から理不尽な処刑を繰り返す王へと豹変する様子に驚かされます。役者であるチャンセンとコンギルの芸に突如笑い出す姿はまさに北村一輝!これから地球を破壊していくX星人そのものでした。

 芸人のチャンセンとコンギルは旅芸人一座を抜け出し、漢陽の町で一旗挙げようと町の中で噂に聞いた宮廷内を皮肉った芝居で人気を得るのですが、不敬罪だとして王の重臣たちによって捕らえられる。「王を笑わせることができれば侮辱してることにならない」と主張し、王の前で風刺劇を敢行するという序盤のストーリー。下ネタばかりの芸なので、王が笑うわけないと思ったら、さすがに世間知らずのおぼっちゃま王にとっては新鮮だった。その晩には、早速妾と下ネタ芸ごっこをする始末なのだ・・・

 映画を観ている者にとって、決して笑える芸ではないのですが、宦官の下半身に「無」とかかれた布を見るとクスリと笑ってしまいました。ヨンサングンの時代、朝鮮史は全くわかりませんが、ハングル文字と漢字が混在していた16世紀の朝鮮。漢字のネタや伏線となる筆跡など、日本人にもわかりやすいけど、カブもあったとは知りませんでした。「9」をカブと言ってたし・・・

 コンギルは女形のような男性。チャンセンとは深い絆で結ばれた男同士。冒頭では男娼のような扱いを受けていたのですが、「後悔するぞ」というチャンセンの言葉でも感じられるようにゲイだったわけではなく、兄弟のような雰囲気。男の友情以上のものもあったのかもしれないけど、ラストシーンを見るとそんなことはどうでもよくなってきます。宮廷に入ってからは、燕山君も妓生遊びに飽きたのか、やがては彼を気に入るようになった。体の関係はあったのかどうか定かではありませんが、これを面白くないと思った王の愛人ノクスは復讐を思いつくという展開に突入します。

 マザコンから暴君へと変貌を遂げる心理劇のような王族の醜い争いとともに、一般庶民の生きていく強さがも感じられました。ただ、出世欲など持たずに笑って楽しく生きていく側と、王に取り入って貪欲に出世を目指す側とが対照的です。腹黒い奴だと庶民からも重臣からも嫌われるってことでした。

 音楽もよかったので、かなり満足できました。だけど、どうせ下ネタ満載なんだから、残酷描写があってもいいと思う。

【2006年12月映画館にて】

kossy