カタクリ家の幸福 : 映画評論・批評
2002年2月15日更新
2002年2月23日よりシネ・リーブル池袋ほかにてロードショー
シャレの分かる俳優たちに最大級の誉め言葉を贈りたい
三池監督が作るホラー・ミュージカルだから、一筋縄ではいかないとは思っていた。予感的中。あのジュリーが、松坂が、かつての自分をパロディすれば、忌野清志郎が自称“英国王室の血を引く米国軍人”の詐欺師で登場。どう見たって胡散臭い軍人に、西田尚美がコロッと騙されるサブ・ストーリーまである。「役者の仕事は、己の殻を1つずつ取り払って行くことだ」と誰かが言ったが、過去も名声もプライドもかなぐり捨て、嬉々として踊るキャスト陣に、最大級の誉め言葉を送りたい。「自分らアホやろ」。
過去の作品をいかにしてリメイクするか。「バニラ・スカイ」の王道派もあれば、「オーシャンズ11」のようなスケールアップ派もある。本作品は“チープさ”を選んだ。演歌調にジャパニーズ・ポップスというドロ臭い音楽にノって、ジャージで踊るダンスシーンしかり。予算がないならと、アクションシーンをクレイアニメにした逆転の発想が、かつてない和製ミュージカルを産み出した。欲を言えば、もっとミュージカルシーンで弾けてもらいたかったが。
しかし、シャレの分かる俳優に、遊び心満載のスタッフたちに、日本映画もまだまだ捨てたモンじゃないと思えるに違いない。
(中山治美)