「完璧な芸術作品」シェルタリング・スカイ ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
完璧な芸術作品
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アフリカを彷徨うポートとキット夫婦。彼らは旅をしているただのトラベラーではなく、死までを旅する私達人間の象徴として描かれています。
夫のポートが「汽車で旅しててやがてシーツの山に衝突する。僕は、衝突すると分かっている。だが、もう遅すぎた。」という夢の話をすると、妻のキットは前兆に聞こえる。と怯えて死を恐れます。このシーンは、今後の二人の運命を暗示していますが、これは私達の運命の暗示の様にも聞こえます。つまり、本作は死が本題なのだと。
サハラ砂漠の美しさが圧巻なフィルム。その砂漠で時を刻み続けたトゥアレグ族。絶対に絶対に、ベルトリッチしか撮れない唯一無二の本物の芸術。映像美に酔いしれました。素晴らしかった。
ラストは、P.ボウルズ本人が出演していました。
私は人生に迷ったら、必ず彼の問いかけを思い出します。
『迷ったのかね?
人は自分の死を予知できず、人生は尽きぬ泉だと思っている。だが全て物事は数回起こるか起こらないか。
自分の人生を左右したと思えるほど、大切な子供の頃の思い出もあと何回心に浮かべるだろう。4〜5回思い出すのがせいぜいだ。
あと、何回満月を眺めるか。せいぜい20回。
だか人は無限の機会があると思う。』
私はあと、何回子供の頃を思い出すのだろう。
私はあと、何回満月を見られるのだろう。
私はあと、何回映画を観られるのだろう。
死を実感させてくれたら、迷ってる暇なんかありませんね。哲学的にも感銘を受けました。
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