「出来の悪いクリーチャー系ホラー?基本的な設定が雑。」ザ・ブルード 怒りのメタファー Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
出来の悪いクリーチャー系ホラー?基本的な設定が雑。
画面や音楽の雰囲気とかはいかにもクローネンバーグっぽいんですが、内容的には出来の悪いクリーチャー系ホラー止まりで、特筆するような「変態的」な要素や「トンデモ」要素は見当たらず、あの怪物の子供たちもチャッキー以下のインパクト。かなりハードルを上げて見てしまったせいもあって、正直、期待ハズレでした。
人間の負の感情が「何か」を産み出してしまう、という設定は昔からホラーやSFにはよく見られますし、時代的な事を考慮に入れてもそこまで斬新な着眼点や工夫は無かったかなと。
特に難点だと感じたのは、ネタバラシが早すぎて、主人公を含む登場人物の誰かの妄想や陰謀などではない事が中盤を待たずに確定してしまう事。まだ前半はどういうストーリーになるのかという期待で見れましたが、本当に子供の怪物がいると周知されてしまった中盤以降は蛇足にすら感じました。
また、あの精神科医の「サイコプラスミクス」とか言う治療法にしても、単に被験者を怒らせる程度のRPGだし、そんな事で無から怪物を産み出すような副作用が生じるとはとても思ず、リアリティという観点からも感情移入しにくい。こういう心理療法が出始めた時代だと考慮しても、ちょっと設定的に飛躍し過ぎ。そもそもあんな異常現象が一回でも起きた地点で普通は治療を中止するでしょ(笑)。精神科医も真剣に患者を治したいと思うまともな医師のようで、変な人体実験や怪物を産み出して喜ぶようなマッドサイエンティストって描かれ方をしている訳でもないから、あんなに何人も怪物を産み出させて何をやりたかったのかよく分からない人物になっています。
その後、他の入院患者のエピソードと関連する事も無く、ラストに至るまでこれと言ったどんでん返しも無いまま終了。それにしても警察も新聞社も、こんなあり得ない事件をどう処理するつもりなんだろ。そっちの方が気になりました(笑)。出演者の鬼気迫る演技は素晴らしいですが…。