「映画史に残る名作」デビルマン オクトパスさんの映画レビュー(感想・評価)
映画史に残る名作
今さらながら鑑賞しその結果、多くの方々に観てもらいたくレビューを投稿しました。
構想10年、制作費10億円の大作であります。故に様々な物議を醸し出している本作品でありますが、間違いなくこれは名作であります。これはデビルマン実写版ではなくデビルマン『パロディー版』なのです。
映画史上最大の駄作と言われますが『パロディー版』と捉えると、この映画の見方や存在価値が随分と変わります。数々の笑いもありオマージュがあります。そもそも映画全体の雰囲気・演出は、日曜朝に放送されている『特戦隊○○レンジャー』に近く、特撮もリアリティーもなく、ニセモノとすぐわかるので原作本来の悲壮感・恐怖感はありません。女性子供も安心して鑑賞できます。近年の映画にありがちな制作費だけかけてCGやキャスティングでごまかす中身スカスカの映画と異なり、本作品は制作費10億円の匂いは全くありません。『潔い』作品であると同時に、ある意味では使途不明金の多い映画と言えます。
公開前より二時間で表現は不可能と言われる原作ですが、デビルマン誕生からハルマゲドンまで一応描かれております。パロディー版ならではの見事な脚本によりシレーヌやジンメン、そしてゼノン(?)まで無理やりちゃんと登場します。ファンの期待を裏切りません。その脚本・演出も素晴らしいですが、そこに『学芸会レベル』と言われる演技が加わる事で一流のコメディ映画に仕上がっています。特に主役の不動明君は上手い下手というレベルを越えて芸術の域に達しています。彼は本作品が初出演、初主演ではありますが、作品を通じて成功を確信したに違いありません。
また、メイン俳優が新人ばかりに対してなぜか脇役には大物が固めております。この辺りもパロディー版ならではのキャスティング。個人的にはボブサップがナイスです。彼はとてもオイシイ役をもらっていると考えます。おかげでベテラン俳優ですら、全員『大根』に見えてしまいます。またエンドロールで「え!こんな人出てたの?」と驚くくらい一瞬しか登場していない大物もいます。ちょっとしたサプライズもあります。
コメディとは言え、決してわざとらしく笑いを取ろうとはしない姿勢が本作品の特徴と言えるでしょう。
せっかくですので中身について少々触れておきます。私のお気に入りは、原作とは異なりなぜかデビルマンが悪魔狩り特捜隊に逮捕されるシーンです。トラックの荷台に磔にされて住宅街の中を連れ去られるデビルマン。それを見送る牧村ファミリー…。とてもシュールな画になっています。笑えます。超人的な強さを持つデビルマンが逮捕されてしまうという珍事も、パロディー版ならではの事。構想10年も納得できる事でしょう。
これ以外にも挙げたらキリがないくらい爆笑シーンがありますが、名作と言われる理由は単なるコメディで終わらず、感動シーンもいくつかきちんと用意されているのです。
ただでさえ尺が足りないにも関わらず、ムダに原作プラスアルファをしてくる辺りはデビルマンファンにとっては喜ばしい事ではないでしょうか。パロディー版だからこそ許されます。
ここでの私のお気に入りは、牧村邸に群衆が襲いかかるシーンです。原作とは異なりなぜか牧村夫妻が家にいるのですが、絶体絶命の最中に…「一つ聞いていい?」「うん」「あなた今まで浮気した事なかった?」「お前一筋だよ」「嘘でも嬉しい」…そして彼らはあっさり死を受け入れてしまいます。
…泣けます。群衆と戦う流れだったにも関わらず、なぜかこの展開。かなり意表を衝かれますが、ヒューマンドラマの要素入れたい制作者の後付けの意図を考えると理解出来ます。ただのお笑い映画で終わらないのです。その辺りについては、特典映像にて舞台挨拶が収録(レンタル版にもあります)されていますので、本編を鑑賞する前に観ておくといいでしょう。
長くなりましたが、鑑賞されていない方は必見です。本当に自信をもってオススメする一本です。