「幕は今一度上がる、人生のカーテンコールの為に」カーテンコール(2004) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
幕は今一度上がる、人生のカーテンコールの為に
「半落ち」で日本アカデミー作品賞を受賞した佐々部清監督の2005年の作品。
はっきり言って、「半落ち」より秀作である。
あるスクープ記事が原因で福岡に異動になった記者の香織。一通のハガキで昭和30~40年代に映画館で活躍した幕間芸人・安川修平に興味を持ち、調べ始める…。
さながら和製「ニュー・シネマ・パラダイス」!
現代と過去が交錯。日本映画全盛期と衰退の時代を、当時の映画や歌謡曲と共に、映画愛とノスタルジーたっぷりに綴る。
作品チョイスも、黒澤や小津と言った日本映画史に残る作品ではなく、座頭市シリーズや高倉健のアクションや吉永小百合の青春映画など大衆娯楽作なのもイイ。
話のメインが、ある幕間芸人の人生。
幕間芸人についてほとんど知らなかったが、映画と映画の休憩の間、舞台上で歌や物真似などを披露して観客を盛り上げた芸人だそうな。
喝采を浴びた全盛期、結婚し、子供も産まれ…。
しかし衰退と共に活躍の場は失われていき、妻と死別、残された娘も手離さなくてはならなくなり…。
幸せからの悲しき人生が、感情を揺さぶる。
意外な安川修平の出生。
今も尚ある○○差別問題にも触れる。
主人公・香織の成長と、淡い恋の思い出。
安川修平の現在の消息、捨てられたと父へ複雑な思いを抱き続ける修平の娘・美里。
父娘の再会は…?
長い歳月を経た家族の絆が感動を呼ぶ。
主人公・香織を演じるのは伊藤歩。彼女の魅力も充分に映し出されている。
特筆すべきは、安川修平役の“二人”。
過去パートの藤井隆は、自身も芸人としての軽妙さと、悲哀を込めた好演。現代パートの元スパイダーズ井上尭之も枯れた味わい。
修平の娘・美里役の鶴田真由は終盤の要と言っても過言ではない。
また小さな役ながら、修平を知る映画館で長年働く売店員・藤村志保、香織の父・夏八木勲の好助演、映写技士役の福本清三も作品世界にぴったり。
少しネタバレになるが…
頑なに父と会う事を拒んでいた美里の最後の最後での心境の変化は唐突過ぎた。
でも、あの笑顔を見れば何も言えない。
とっくに降ろされたと思っていた幕。
人生のカーテンコールの為に、幕は今一度開かれる。