「虚構と現実が入り乱れるかたちでハリウッドの現実を描いた怖さまでを感じさせる映画」サンセット大通り Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
虚構と現実が入り乱れるかたちでハリウッドの現実を描いた怖さまでを感じさせる映画
ビリー・ワイルダー監督による1950年製作のアメリカ映画。原題:Sunset Boulevard。
著名だがビリー・ワイルダー監督による作品は、何と初めての鑑賞。コメディのイメージが強く意外感も有り。アカデミー賞で、脚本賞、作曲賞、及び美術賞の3つを獲得。無名だったウィリアム・ホールデンの言わば出世作らしい。
主演のグロリア・スワンソンが、過去の大スターであった栄光の日々の延長線上で夢見る様に生きている元大女優を、とても痛ましく見える圧巻の表現力で演じていた。ウィリアム・ホールデンを引き止めようと、チャップリンのモノマネまで上手に演じていて驚かされた。彼女は1899年生まれで、映画の役通りに、セシル・B・デミル監督(本人役で出演)に見出されたサイレント時代の大女優というから、半端でないリアルさ。役柄を考えると、よくぞ出演したと思える。
若い貧乏な脚本家役ウィリアム・ホールデンはあまり良い演技には思えなかったが、グロリア・スワンソンの豪邸プールで死体となって浮かんだところから、自分語りで物語の語り部となる展開は、とてもユニークに感じた。
グロリア・スワンソンの召使役(元映画監督でノーマの最初の夫で有ることが明かされる)のエリッヒ・フォン・シュトロハイムは、サイレント時代の巨匠監督とのことで驚かされる。撮影中にスワンソンと衝突し撮影中止の過去も、事実として有るらしい。そういえば、喜劇王バスター・キートンもスワンソンのトランプ仲間として本人役で登場していた。
ナンシー・オルソンはホールデンに恋する脚本家志望の娘役で、唯一の普通のヒトで、言わばハリウッドの異常社会との対比を強調する役回りか。好感を覚えたが、残念ながら大女優には成らなかった様だ。
最後、殺人事件に押しかけたマスコミに、銀幕復帰が叶い撮影が始まったと、演技をするスワンソンの姿、その気持ちに応えて撮影指示を出す元監督シュトロハイムの姿を映す映像が、痛ましい・狂気の様相を抉り出す。
楽しい或いは面白い映画とは言えないが、虚構と現実が入り乱れるかたちで、ハリウッドの現実を描いた映画で、そこまでやるんだという怖さを感じさせる驚きの映画であった。
製作チャールズ・ブラケット、脚本チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、D・M・マーシュマン・Jr、撮影ジョン・F・サイツ、音楽フランツ・ワックスマン。
出演は、ナンシー・オルソン、ウィリアム・ホールデン、グロリア・スワンソン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、セシル・B・デミル(本人役)、バスター・キートン(本人役)。