劇場公開日 1936年

「ヒッチコックの映画を形づくる要素はほとんど揃っており、かつ確立している」三十九夜 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヒッチコックの映画を形づくる要素はほとんど揃っており、かつ確立している

2019年2月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

ヒッチコック英国時代の初期の代表作
ファンならば観ていないわけにはいかない作品
テンポよくお話が進む

ヒッチコックの映画を形づくる要素はほとんど揃っており、かつスタイルとして確立している
物語の発端と鉄道を交えた展開、そこにユーモアと皮肉、微かなエロ、もちろん美女
それらが程好くブレンドされて切れ味良い演出で展開される

逃げ込んだ宿屋の軽妙なやり取りとほのかに漂わせるエロいシーンや、演説会の演者に間違われて適当な口からでまかせのきれいごとで誤魔化して演説をしていると聴衆から熱狂的に拍手喝采を受けてしまう皮肉と風刺のシーンなどは特に素晴らしい

ラストシーンでミスターメモリーを尋問する人物は後ろ姿しか撮されず、エンドマーク直前にに片手だけの手錠にスポットライトを当て、それが誰かと同時にお話が全て解決したと観客に納得させるこの演出は本当に見事

題名の三十九夜とはスパイ組織の名前
The 39 Stepsを単に39階段とかと訳さず
三十九夜とした戦前の日本の宣伝マンのセンスに脱帽
39階段とは捕まれば死刑になるスパイの宿命、13階段の3つ分の悪い奴等くらいのことからつけたものだろう
それを終盤のパラディウム劇場の演目であった狂った月から着想を得てなんとも色気のある題名にしている

現代多用される英語のままの題名の味気なさとは大違いだ

あき240