劇場公開日 2003年6月28日

「【実話&ガチギャング出演】で圧倒的にリアルな映像とその熱量に晒され続ける120分」シティ・オブ・ゴッド 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0【実話&ガチギャング出演】で圧倒的にリアルな映像とその熱量に晒され続ける120分

2023年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

開始1秒から響き渡る不愉快で不気味な刃物音。騒がしい声。そして何かが始まっている事を予感させるチェイス。軽快なカメラワークと常に飽きさせない展開は刺激的で笑い事じゃないのにちょっと笑えてくるくらいで、もうただただ魅入ってしまう。そうして一瞬でシティ・オブ・ゴッドに連れて行かれます。

日本での知名度が恐ろしく低い本作。自分もタイトルだけは薄っすら聞いた事が有るくらいで今回初めて観たのですが、、凄まじかった。

マジで凄まじかった。。。。。

なんてったって”出演者ほぼ全員”現地のスラムから公募したガチ素人のガチスラムキッズなので迫力が半端じゃないんです!!!この映画を超える迫力と人間の熱量を感じさせる映画にはそうそう出会えないと思う。。。。誓います。

そして物語のテンポも軽快で、目の前に広がる凄惨な光景に一々悲しんだり衝撃を受けている暇なんて有りません!!!どんどん話が進んでどいつもこいつもすぐ撃って!殺すし!死ぬし!で諸行無常です。

しかも普通ギャングと言ったら大人で豪邸を舞台に『一儲けしようぜ!』みたいなそういうイメージですが、この映画での主役は子供達です!
なので彼らは無邪気だし計画性にも乏しいのですぐに撃って殺してやりたい放題。慈悲のような心にも乏しく見ていられない危なっかしさが有ります。無邪気って一番怖いんだなと知れました()

でもこれが現地のリアルを表現しているようで、娯楽的な側面と没入感の両方を演出出来ていて見事でしたね。

『出演者が素人?ならやっぱりちょっと、”アレ”なんじゃないの?・・・・・・・・』

全っっっっっっっ然そんな事無いので安心してください。

マジで本当に素人!?そういう筋書きでデビューしてんじゃないの?というほどみんな演技が上手くて迫力が凄いんです。マジで『リトル・ゼ(メインの悪役)』とかチビリそうになるほど怖いです(笑)。特に少年時代のゼの溢れ出るオーラは凄まじいので時間が無い人は少年時代のゼだけでも観てください(笑)。

まあそれもそのはずで、彼らは舞台となったスラム出身のリアルな現地人ですので画面で浮く事も無ければ振る舞いや口調も自然で普通に本物なんです。演技も殆どアドリブらしく、まさに現地の振る舞いと言葉を映し出しているのでリアルで迫力が有って当たり前なのです。

現地のスラム民パワーはここまで凄いのかと。やっぱりただの演技では出せない本物の熱量ってモノがこの世には存在するんだなというのを学べます。文春キャバクラで捕まった某土下座系俳優がオフでも似たような事をしていたように、『演技の究極って本性と融合する』んだなって、そんな映画人も学べるような作品です。

それとこんな内容なのに、どこか青春映画的な側面も持っているのが面白いんですよね。ある意味これがブラジルの、シティ・オブ・ゴッドの人生であり青春であり生き様なんだぞという。傍から見たら『こんな所に生まれなくて良かった』っていう感じですが、彼らからしたら人生を映し出したドキュメンタリーなのです。

なのでそういった凄惨な抗争だけに焦点を当てず、結構クドいくらいに恋愛を描いているのも印象的でしたね。でもそういったところに安っぽい感動は無くて、誰かに固執する話でも無い。

とにかく鉛玉の速度と同じように凄惨な”日常”が、月日がただ流れていく。そこにカメラを入れたような感じで、まさに諸行無常なのです。犯人も解決も救いも懺悔も有りません。ただの順番で、また誰かがゼになるのです。

あと最後に、見終わったらもう一度観てください。色々発見が有ります。

             この先微ネタバレ
====================================

二度目の鑑賞で気付いたのですが、ブスカペは序盤から出演していたのですね。てっきり途中から出てきたような印象でしたが、最初のシーンでPKを守っているGK役の男の子がブスカペです。ブスカペは当時のリトル・ゼよりも身体が大きく年上に見えますが、終盤のシーンではゼの方が大人っぽくブスカペはまだまだ青年くらいに見えます。

まあ新聞社に雇われている時点でそこそこの歳だと分かるのですが、どうもブスカペがずっと14歳くらいに見えていたので最初の体格差的にゼより年上かよ!!っていうちょっと個人的な衝撃が有りました(笑)。

あとマネっていう弟を殺されたヒーローがとある少年に裏切られるという件が有りましたが、その理由となったシーンを遡って見てみるとちゃんと映ってるんですよね!しかも結構意味深に。細かいところまで凄いです。

そして最初のロゴが出てくるシーンのロゴの一部が終盤のゼが死ぬシーンを壁越しに撮影している影絵になっています。このアングルは実際にもそうだったという事なんでしょうかね。とにかく絶対2週しないと駄目ですねこの映画は。

真中合歓