劇場公開日 2023年7月28日

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「人生に指針を与えてくれました」さらば、わが愛 覇王別姫 くちがさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 人生に指針を与えてくれました

2025年8月28日
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鑑賞方法:映画館

驚く

斬新

映画が好きです。
でも繰り返し観ている映画は多くありません。
この映画は、数少ない何度も観ている映画の一つです。

この映画を観ようと思ったきっかけは、高校生だった当時、Twitterでフォローしていた人のリツイートでした。
リツイートされたそれには、高橋一生がこの映画の蝶衣を演じているレスリー・チャンのような役者になりたいと書かれていました。
高橋一生のファンでも無く、当時の私はレスリー・チャンも知りませんでした。
しかし、なぜかそのツイートに惹かれたのでした。
惹かれるまま、こちらの映画を鑑賞しました。

実は結末を知った状態で最後まで観たのですが、ネタバレを知っているかどうかは、この作品の出来栄えには関係ないと私は感じました。
1度目に観た時はただ驚いてしまって、この映画の深みなどを分かってはいませんでした。
でも、自分が強烈に惹かれたことは分かりました。
初めて観たのが高3の終わり頃、大学進学を機に地元から離れる時期だったので、かなり感受性の強い・感性が鋭いこともあったのか、心を持っていかれました。
この映画を好きになり、関連する本を調べ、四方田犬彦がアジア映画について書いた本を読みました。
その本に載っている映画は観たことがないものの方が多かったけど、ホモソーシャルについて初めて知ることができ、こちらの本も人生に指針を与えてくれたと思います。

さまざまな映画を取り上げた中で、この作品について書かれた論文は、今でも心に残っています。
この論文では、蝶衣は虞姫という役を生かして・通じて、小楼を愛していたという記述がありました。
この映画が好き過ぎて、本だけでなくいろいろな方のブログも読んでいたのですが、「男だけど好きになっていいですか」ということを言いたいのである、とまとめていたブログもあり、その記述も印象的です。
蝶衣の性自認は男性だったであろうことが、彼の気持ちを私にきついほどに想像させ、かつ私が彼を好きでない要因だと思っています。

私は菊仙が好きです。
性格や人物像もそうだし、コン・リーの演技が好きです。
先ほどの論文では菊仙にも注目していました。
菊仙は小楼と蝶衣から、最終的に周縁に追いやられるのですが、それでいて2人から、もしくは社会から押しつけられるものがあるんです。
責任の行き着く場所が菊仙だったと思います。
そこが、私が彼女を好きな理由の一つです。
私もまた、母なる包容力を彼女に求め、押しつけているのかもしれません。

覇王別姫のおかげでホモソーシャルを知り、ホモソーシャルを直接扱ったわけでないにしろ、卒論で取り上げ、あまつさえ大学院まで行って修論を書きました。
この映画が無ければあのタイミングでホモソーシャルを知ることはなく、修士に進もうとしなかった可能性があります。
あらゆるもの・ことで、2度目は基本的に心が動かない私がこんなに好きになることがあるなんて思わなかったし、これくらい好きになれる映画を求めてずっと映画を観続けています。
見つからないであろうことも察しています、でも諦めたくないですね。

一生、覇王別姫が好きだと思います。

くちがさん
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