カミュなんて知らない : 映画評論・批評
2006年1月10日更新
2006年1月14日よりユーロスペースほかにてロードショー
今時の“軽さ”を批判するでも共感するでもなく
タイトルにあるカミュとは、かつて絶大な影響力を持ったあのフランスの作家なわけだけど、それこそ“知らない”人も多いかもしれないので簡単に説明にしておくと、彼の代表作「異邦人」(40)の主人公は“太陽が眩しかったから”という理由で殺人を犯し、死刑になる。不幸なことに今ではそんな“不条理殺人”なんて珍しくなくなり、この映画の登場人物である学生たちは、“人殺しを経験してみたかったから”といった理由(?)で老婆を殺した豊川の高校生の事件を題材に映画を撮れ……と教官から課題を与えられ、キャンパスでの映画作りに奔走する。物語は、学生たちの間での恋愛騒動――この辺りはトリュフォーの名作「アメリカの夜」へのオマージュ――や映画マニア的なおしゃべり、さらには数々の映画の名作を引用しながら綴られていくが、映画作りはうまい具合に運ばない。
全体として今時の学生の“軽さ”を批判するでも共感するでもなく、それを模倣するかのように終わるかと思えたこの映画、最後の15分で驚異のドンデン返しが待ち受ける。その内容についてはここで説明しない方がいいと思うけれど、“映画作りについての映画”にはどこか映画作りのタブーに触れるヤバさがあり、それが本作のラストで一気に怒涛のように全面展開される……とだけ予告しておこう。
(北小路隆志)