劇場公開日 2004年6月26日

「【”生きて一緒に帰るんだ!。そして、60年後に兄から貰った掘り起こされた万年筆。”今作は、朝鮮戦争に翻弄された兄弟の姿を、激烈な戦闘シーンと史実を交えて描いたヒューマン・ドラマの哀しき逸品である。】」ブラザーフッド NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”生きて一緒に帰るんだ!。そして、60年後に兄から貰った掘り起こされた万年筆。”今作は、朝鮮戦争に翻弄された兄弟の姿を、激烈な戦闘シーンと史実を交えて描いたヒューマン・ドラマの哀しき逸品である。】

2024年11月20日
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ー ご存じの通り、朝鮮戦争は近代史の中でも特に悲劇的な出来事である。共産主義の中国、旧ソ連の後押しを受けた北朝鮮と民主主義のアメリカを主とした国々の後押しを受けた韓国との同一民族が38度線を境に、お互いを”アメリカの手先””アカ”と罵り合いながら、殺し合いをした戦いであり、この戦争は未だ”休戦中”なのである。ー

■1950年、韓国ソウル。
 ジンテ(チャン・ドンゴン)と弟のジンソク(ウォンビン)は第二次世界大戦後の貧困の中、家族で幸せに暮らしていた。
 しかし、朝鮮戦争が勃発し、二人は強制徴収により過酷な戦場に放り出される。
 兄のジンテは身体の弱い弟を何としても戦地から引き離そうと、身代わりに危険な任務に身を投じてゆく。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作は、観ていて非常に心理的にキツイ。同民族が戦う凄惨なシーンが多数あるからである。
 劇中で”俺たちは何で戦っているのかな。”と兵士が呟くシーンがあるが、正にその通りだからである。

・前半は、ジンテはジンソクを戦地から解放するために、鬼神の如き戦いに自ら果敢に飛び込んで行き、軍曹迄上り詰めて行く。
 だが、その過程で彼は知り合いの北朝鮮の作業に強制的に従っていた少年ヨンソクに対し、厳しい態度で接し、その姿を見たジンソクは兄の行動に懐疑的になって行くのである。
 そして、兄が権限を得て自分を除隊させようとしても、拒絶するのである。ジンソクは、味方からアカと疑われ、倉庫に閉じこめられ大隊長により火を放たれるのである。

■今作で特に悲劇的なのは、ジンテの婚約者だったヨンシンが、生きるために止む無く北朝鮮の労働奉仕に参加していた事から、韓国の反共自警団に射殺される近年まで韓国が秘匿していた”保導連盟事件”と呼ばれる粛清により射殺されるシーンであろう。
 その姿を見たジンテが北朝鮮の旗部隊に入った事は、容易に理解できるのである。
 だが、ジンソクは密かに倉庫を逃げ出していたのである。

■沁みるのは、ジンソクが未配達だったジンテの手紙を読むシーンである。その手紙には昔と同じ優しい兄らしい母を思い遣る言葉と、ヨンシンを気に掛ける言葉が綴られているのである。

<再後半、ジンソクと正気を失ったかのようなジンテが、韓国軍と北朝鮮軍の兵士として戦うシーン。ジンソクは必死に兄に、自分の顔を思い出させ、正気に返ったジンテはそれまで所属していた北朝鮮軍に機銃掃射をするのである。
 そして、現代。ジンテが斃れた格好のまま遺骨が発見され、年老いたジンソクが涙ながらに兄に話しかけるのである。
 今作は、朝鮮戦争に翻弄された兄弟の姿を、激烈な戦闘シーンと史実を交えて描いたヒューマン・ドラマの哀しき逸品なのである。>

NOBU