「人生で何度も訪れる分岐点。選んだ先の結末。」ブロークバック・マウンテン アルさんの映画レビュー(感想・評価)
人生で何度も訪れる分岐点。選んだ先の結末。
映画としてはかなり少ない台詞の中で、
「心で叫んでいる言葉」と「それとは違う言葉」。
「言葉に出来ない表情での言葉」が素晴らしい。
長い人生に於いて、
思った事を全て言葉に出せたらどれだけ楽か。
相手への気遣い、不器用さ、純粋な気持ち。
「ブロークバックマウンテン」という
壮大で美しい大自然の中で、
20数年という長い時間を、友情と愛で、
大事に大事に紡いでいく。
人を好きになる切っ掛け。
本当に些細な事だったり、同じ時間を共有したり。
場合によりその場の勢いだったり。
作品の時代設定、
そして本作上映当初とは時代も変わり、
色々な事に理解されるようになり始めてきた現在。
当時は「好きになる事」自体が大変だったと思う。
妻・子供達と「愛する、愛される」という日常が、
イニスとジャックには「違和感」だったのだろう。
選択出来た分岐点、お互いが幸せになれた結末も、
何度か想像させる。
それでも全ての分岐点で正解を選んでいけるのは、
不可能なのが人生。
その失敗と後悔をどう捉えるか。
残される側が相手の愛情の深さを計り知る幸せ。
自分自身を理解して認めてくれる人が居る幸せ。
至る所に人生の隠れた「幸せ」がある。
だが、2人が求めていた「幸せ」は無かった。
鑑賞中、イニスとジャックの二人の関係に、
気持ちが整理出来ず、感情移入が仕切れず。
どうしてもイニスの妻アルマの目線に近い所で、
客観的に観てしまった。
そのアルマ役を演じるミシェル・ウィリアムズ。
個人的に大好きな女優さん、
今回悲しい役柄で苦しみ葛藤する演技はさすが。
人への愛情、人との友情。
人と人との関わりの大事さを気付かされる名作。
ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホールの、
力強い渾身の演技は必見。
ラストの思い出の大切さに胸が締め付けられる。