「ひねくれ者に贈るファンタジー」ビッグ・フィッシュ だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
ひねくれ者に贈るファンタジー
ちょっと前にTOHOシネマズの旧作企画で観ました。公開時にも映画館で観てます。もう10年以上前なんですねぇ…
10年ぶりですからほぼストーリーは忘れていました。
覚えていたのは老夫婦がバスタブに着衣のまま浸かって寄り添うシーンと、黄色い花畑のシーンのみ。
バスタブのシーンがとにかく印象深く、涙が溢れるシーンでして、今回も涙がこぼれました。私の泣きのツボとして、長年連れ添った老夫婦が体に触れ合いながら愛を語らうシーンというのがあり、正にそれでして、ここは堪えられないのです。数は少なくてもこの世のどこかにはきっと続いてゆく愛もあるという、希望を見出しているようです。
他のシーンでも今回はかなり泣いてしまいました。理由はよくわかりませんでした。
わたしはどちらかといえば、父のホラ話を嫌う息子に考え方が近いのです。ホラばかりで本当のことを話さない父を疎ましく思う気持ちがよくわかります。
でも、老父が話すホラ話は楽しいのです。色鮮やかな世界に息を飲み、切なくなるのです。ユアンマクレガー演じる若い父がとても魅力的に思えます。私は一体どうしたのかと、観終わって以来しばらく考えていました。
考えた結果、このように思い至りました。
現実世界はつまらないし悲しいものです。正に絶望の世界です。誰に言われるでもなくわかりきっています。昨今はニュース番組を観るだけでも苦しくなります。
だからこそ、楽しくて美しくてユーモア溢れる空想の世界を、本当だ!見てきた!と語る老父を、嘘だと知りながらも私は心底信じたいのではないかと。
ひねくれた話ですが、現実を見ない夢見がちな風潮を拒んでいるからこそ、こっそりとファンタジーを、欲しているのだと思います。ひねくれてしまった大人にこそ、ファンタジーが必要なのです。
10年前の鑑賞時よりも、2015年の鑑賞の方が強く心に沁みました。
それはより厳しい現実にさらされ、乾いた心にうるおいを補給したいという無意識の仕業でなかったか、と思っています。
ラストで息子が、あんなに父のホラ話を嫌っていた息子が、自ら父にホラ話をしました。父の死に方を、豊かに、この上なく幸福に語りました。あれが真実だと信じていたいし、信じる限り真実なんだと思いました。
ビッグフィッシュをみた数日後にビッグアイズを見ていまして、ビッグアイズも良かったですか、やはりティムバートンには作り込んだファンタジーが似合うなと思いました。
ビッグアイズも良かったですが、断然ビッグフィッシュ派ですね。あとはヘレナボナムカーター…
別れちゃったのショックです。