劇場公開日 2004年5月15日

「裏切られた」ビッグ・フィッシュ J-taさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5裏切られた

2017年2月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ティム・バートンに裏切られた。

私の世代にとってティム・バートンは「チャーリーとチョコレート工場」の監督であり、「ナイトメアビフォアー」の監督であり、なんとなく『子供でも楽しめるファンタジーな映画をつくる人』くらいに思ってナメていた。だから「シザーハンズ」も「ビッグアイズ」も、この「ビッグフィッシュ」も、雑誌の片隅に何度も見かけてはきたものの素通りしてきていた。それが今回絶賛話題沸騰中の「マリアンヌ」をみに行くにあたり、私の大好きなマリアン・コティアールのアメリカ映画デビュー作が「ビッグフィッシュ」だと知り、重い腰をあげて、(まあ一応みておくか)くらいの気持ちでみたのだ。

完全にティム・バートンに裏切られた。

この映画が私の好きな『父と息子の話』だったからというのはある。それプラス私の好きな『現実と虚構の線がファジーなファンタジー』だったからこそ、こんなにも胸に来たのだと思う。
調べてみれば「シザーハンズ」も「ビッグフィッシュ」も、「チャーリー…」より以前につくられた作品であり、「チャーリー…」以降にそれらの名を知った私は勘違いをして、それらを勝手に「チャーリー…」的な子供から大人まで楽しめるファンタジーに溢れた映画、だと思い込んでいた。(私は「チャーリー…」が嫌いなわけではない。一人で大人の男がみる映画としての選択肢にそのタイプの映画が入ってきづらいというだけだ)

思い込みで何かを一色担に端に寄せてしまうことのつまらなさを学び、そこから一歩出て近づいてみることの面白さを学んだ。私の中のくだらない偏見を捨て、フラットに近づいてみることで、もっとたくさんの面白いことに近づけるのだと、そんな風に思わせてくれた、裏切ってくれたティム・バートンに感謝し、私も私の父にもっと近づいてみようと思わせてくれる。そんな季節外れに暖かい冬の夜にみた、暖かい映画であった。

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