バトルフィールド・アース : 映画評論・批評
2000年10月15日更新
2000年10月21日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
洗脳されたトラボルタ星人に未来はあるか?
「バトルフィールド・アース」はSF作家ロン・ハバード原作のSFアクション映画である。ただし、ハバードはSF作家以外の顔も持つ。世界中に信者を持つ巨大カルト、サイエントロジーの創始者なのである。トム・クルーズを筆頭に芸能界にもサイエントロジー信者は多い。ジョン・トラボルタもその一人だ。忠実なる信者トラボルタは、師の残した長大なSF小説を映画化して世に広めようと考えたのである。だが、すっかり洗脳されているトラボルタ星人は大事なことに気づかなかった。ハバードは (詐欺師としては一流だったかもしれないが) SF作家としては三流以下のお笑いでしかなかったのである。
突っ込みどころ満載、というよりはまともなところを探す方が一苦労なこの作品。こすっからく汚職して利益を稼ごうとするトラボルタ星人に中間管理職の悲哀を見るもよし。トラボルタ星人の深すぎる人間観察に頭を抱えるもよし。金塊を掘ってこいと命じられ、フォートノックスから延べ棒を持ってくる主人公の言い訳に腰を抜かすもまたよし。映画に愛や感動や論理性や真実や教育性を求めている人にはお勧めできないが、何かこれまで見たことがないものを見たい人、宗教にはまるとどういう運命が待っているかを知りたい人、「シベリア超特急」こそが至上の傑作だと信じて疑わない人には絶対のお勧めだ。
(柳下毅一郎)