「ホモソーシャルを穿つ猛毒、あるいは解毒薬」御法度 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
ホモソーシャルを穿つ猛毒、あるいは解毒薬
松田龍平が妖艶きわまるファムファタールぶりを発揮した大島渚の遺作。浅野忠信といいビートたけしといい、マジで良い役者が揃い踏みしている。
けっきょく松田龍平が新撰組をどうしたかったのかは最後まで判然としない。ただ、メタレベルで判断するなら、彼の存在にはホモソーシャルを解体するための猛毒あるいは解毒剤、といった寓意が込められているように感じた。
新撰組というのは言わずもがな男の世界であり、暴力と閉鎖的友情だけが絶対的な審級として機能している。それは現在も同じで、新撰組というタイトルだけがすげ替わった男の世界、すなわちホモソーシャルがあらゆるところに瀰漫し、社会全体を掌握している。
しかし彼らのそういった「強さ」はつまるところ虚勢に過ぎない。そういう示威的で強権的な「強さ」などというものが本物の強さであるはずがない。したがって彼らの「強さ」はふとした拍子に、ほんのささいなことで瓦解してしまう。
事実、新撰組は松田龍平の闖入を許したことで大きくバランスを崩してしまった。「強さ」というフィクションを維持することができなくなり、情けない叫び声や喘ぎ声を上げる。
新撰組の中でもとりわけ威勢が良くノンケっぽかった沖田総司が実は一番松田龍平に入れ込んでいたというのも頷ける話だ。
コメントする