「【”災い転じて福となす映画”今作は毎日、単調な仕事に行き会話も余りない或る家族が、ニートの太っちょ息子が心臓発作で倒れた事から、家族の絆を取り戻す様を描いたヒューマンドラマである。】」人生は、時々晴れ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”災い転じて福となす映画”今作は毎日、単調な仕事に行き会話も余りない或る家族が、ニートの太っちょ息子が心臓発作で倒れた事から、家族の絆を取り戻す様を描いたヒューマンドラマである。】
■タクシー運転手のフィル(ティモシー・スポール)は、スーパーで働く妻ペニー(レスリー・マンヴィル)、高齢者施設で働く娘レイチェル(アリソン・ガーランド)、そして無職の息子ローリー(ジェームズ・コーデン)の4人でロンドンの小さな集合住宅に住み、質素な生活を送っている。
食事の際も余り会話もなく、貧しくも慎ましい生活を送る一家。だが、ある日、そんなフィル一家に或る出来事が起きるのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、前半は観ていてキツイ。余り会話のない家族の姿。特に無職の息子ローリーは、ペニーが作る食事に文句を言いながら、食べ終わると一人でソファでゴロゴロしている。そりゃあ、太るだろうと思いつつ、フィルはそんな息子を叱る事もしない。
ー 前半シーンでは、小さな集合住宅に住む他の家族も描かれるが、娘が望まぬ妊娠をした家や、ヤサグレ娘のサマンサ(サリー・ホーキンス)が描かれる。
そして、ここがポイントなのだが、劇伴が只管に哀しいトーンで流れるのである。-
・フィルも妻ペニーも娘レイチェルも、そして無職の息子ローリーも、笑顔を浮かべる事はない。唯々、毎日を喜び無く生きているのである。ちょっとなあ。
■だが、ある日無職の息子ローリーが集合住宅内の公演で倒れる。心臓発作と診断されるが、ペニーがフィルに連絡を取ろうとしても繋がらない。
フィルは、一人海に出掛けていたのである。自分の人生って何だろう、という表情で、いつも呼び出されるタクシー運転手だから、電話も切っていたのである。
漸く連絡が取れ、ペニーはフィルを激しく詰る。ペニーは矢張り息子を愛していたのである。
ここでの、フィルを演じるティモシー・スポールが、レスリー・マンヴィル演じるぺニーの顔を見て伝える言葉は沁みる。
彼は涙を浮かべながら言うのである。
”愛しているか?””君がこんなデブの俺と一緒になってくれた時は嬉しかった。けれども・・。今のままなら、死んだ方が良い・・。”
その言葉を黙って聞いているペニーの目からは涙が零れ落ちている。
貧しさと、単調な日々が二人の愛情を冷えさせてしまっていた事が分かるシーンである。
そして、家族ならば矢張り毎日顔を合わせたら、挨拶をしなければ駄目だよなという事を思ったのである。
朝起きて顔を合わせたら”おはよう。”会社から帰ってきた時に、誰かが起きていたら”ただいま。”ご飯を食べる時は”いただきます。ご馳走様。”
当たり前だけれども、大切だよね、挨拶って。
<ラスト。病院のベッドにちょっと元気そうに横たわるローリーの周りにはフィル、ペニー、そして仕事を休んで駆け付けたレイチェルがパイプ椅子に座っている。
ローリーは、今まで忙しくて自分には優しい声を掛けなかった両親が心配そうに、けれども笑顔で自分を見舞ってくれている事が嬉しいのか、笑顔なのである。フィルもペニーも笑顔を浮かべている。
今作は毎日、単調な仕事に行き会話も余りない或る家族が、ニートの太っちょ息子が心臓発作で倒れた事から、家族の絆を取り戻す様を描いたヒューマンドラマなのである。
”人生は、曇りや雨の日が多いかもしれない。けれども、真面目に生きていれば、たまには晴れる日もあるよ。”というマイク・リー監督のメッセージが伝わって来る作品でもある。>