アバウト・シュミットのレビュー・感想・評価
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退職した孤独に共感するし、娘を嫁に出すことへの葛藤にも共感した。そんな中の結婚式のスピーチが絶品だと思う
Amazon Prime Videoのセールで鑑賞。
会社を退職する。一人娘が結婚する。妻をなくす。これらの孤独に向かう大きな出来事は、これくらいの高齢者の多くに訪れること。でも、主人公シュミットは3つの出来事が重なるので、けっこうつらいだろうと共感した。
そんな中で、クライマックスの結婚式のスピーチがこの映画の最大の見どころだろう。
本当の気持ちを噛み殺しながら、見事に娘の結婚を祝福してみせる。スピーチの途中に長い間が入る。(もしかしたら、結婚をぶち壊すようなことを言うのではないか、と見ていて緊張する)でも、シュミットはそこをこらえて、笑顔を見せながらお祝いを述べる。
聴衆に本当の気持ちを気づかれることなく、喝采を浴びるシーンは万感がこもっていて、良かった。さすが、ジャック・ニコルソン!
他にも、孤独を感じたことのある高齢者にとっては、共感する場面が多そう。個人的には、退職したあと、後任の後輩を訪ねる場面。「そりゃ、そうだろう」と思いながらも、シュミットに共感した。
ジャック・ニコルソンは別格として、他の俳優陣の演技もうまかった。娘が結婚する相手の家族たちの演技など、なんとなく品の悪さを醸し出すのは、やりすぎると不自然に見えるが、ちょうど「違和感がある」程度でうまいと思った。
特に、婿ランドール(ダーモット・マルロニー演)が「悪い奴じゃなさそうだけど、なんとなくイヤな感じがする」のは映画のポイントなので、難しいところをうまくやっていたと思う。
ラストでシュミットが涙を流すが、これを予告編で「この涙のわけを知ってほしい」と期待させる言い方をしている。ジャック・ニコルソンが万感を込めて泣くので、感動的なシーンではあるけど、「わけ」は、ちょっと拍子抜けした。この場面は万感を込めてニヤリとして、泣くとしたら、結婚式のスピーチのところにした方が良かったのではないか。
ラストの涙の意味
シュミットのラストの涙の意味が気になった。お礼の手紙を見て生きる意味を感じられた感動から来る涙なのか。それとも、ピュアな少年に愚痴まみれの手紙を送っていた自分を恥じる涙か。展開的に、後者だとちょっと可哀そすぎるので、前者であって欲しいと思った。
沁みる映画
10年ぶり2度目の視聴。
前に観たのは学生の頃。そのときの印象はだらしないおっさんの哀愁物語。
今観ると全く印象が違います。
映画はまず退職まであと数十秒、オフィスの自室で定年までカウントダウンを刻む時計をじっと見つめるジャックニコルソンの姿から始まります。
自分の会社員人生を振り返っているのか、はたまたこれからの一変する生活を憂いているのか。
それまでは社会に、部下に、会社に、家族に必要とされ、全てを背負ってプライベートも切り捨てて働いてきた自分。これからはどのような生活となるのか想像もできないでしょう。
家には42年間連れ添った妻。一人娘は遠くはなれた街で結婚式を控えています。
周りの全てを背負って働いてきた会社員、名は残せなかったものの他の誰にも真似できない仕事をしてきた自負、誇り。家族にも平均以上の暮らしを提供してきた。そんなプライドを抱えても寂しさや虚しさは募るばかり。
そんな中、長年連れ添った妻が突然倒れ、帰らぬ人に。
虚無感と焦りの中を迷走しながら、過去の自分を辿る旅に出ます。
若い頃のジャックニコルソンも好きですが、この年齢の力の抜けた彼の演技も最高。
もう引退したとも報道されるなか、じっくり彼の演技を楽しみたいものです。
ラストシーンの演技は本当に秀逸。表情ひとつであれだけの多くのことを伝えられる役者は今後も現れないでしょう。
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