「現代社会に通じる問題提起と素晴らしき愛の形」X-MEN:ファイナル・ディシジョン Maryさんの映画レビュー(感想・評価)
現代社会に通じる問題提起と素晴らしき愛の形
この映画を始めて観たのは、私がまだ小学生の頃であった。父とX-MEN、X-MEN2と次いで観賞したのだが、X-MENはその当時から特に大好きで格好いい憧れの存在で、しかしその頃はまだとても幼かったから内容は分かれども「ジーンが死んじゃった!!!ガーン」くらいの記憶しか残っていなかった。それから12年ほど経って先月にX-MENシリーズを一気見しようと思い立ち2回目の鑑賞に至ったのだが、これがもうなんとも非常に素晴らしい作品であったことに気付くのだ…長文になるが、いつか誰かが読んでコメントをくれることを願って、先ず素晴らしかった点を3つ程、次に疑問に残る点を何点か記すことにする。
まず、1,2と次いで相変わらずミュータント達は人間の進化の形でありみな素晴らしい能力を持っているのにも関わらず、それがマイノリティであるが故にマジョリティである人間に追いやられ、そしてみなそれぞれ苦悩を抱えているという点にとても現代社会の差別問題などにシンパシーを感じ、彼らのために心が痛んだ。そんな状態だから、中には能力をわざわざひけらかしたり人間に対して敵意を持って滅ぼそうとする者たちが現れるのも至極当然だと言えるが、それでも共存の道を諦めない素晴らしき道徳心の持ち主であるチャールズには本当に学ぶべきことが多くあると感じた。彼のような心というのは、それも彼の多くの苦しみによるものであるから、誰もが得られるわけではないし相当な鍛錬が必要なことであるが、いい方向に向かわせようとしつつもそれが全く強制のように感じないそのリアリティは、俳優の演技の素晴らしさも加担しているからなのであろう。ジーンによってチャールズが霧消してしまったシーンは、彼の最期のセリフとわずかな微笑みに涙せずには観られなかった(実際は精神だけチャールズの弟に転移させていたということだが…あの続きが観たい!!)。
またこの映画で最も素晴らしかったシーンは、ダークフェニックスと化したジーンをウルヴァリンが殺すラストである。ジーンは自身でも抑えられない程の強大なパワーを持っていて、それを今までコントロールしていたチャールズを殺し、愛していたサイクロプスも序盤で殺してしまい…その彼女の本当の心の声、『Save me.』という最期の言葉の重みに涙が溢れて止まらなかった。前述したように、人間もミュータントもみな苦悩を抱えているが、ダークサイドに堕ちてしまったとはいえ彼女も真にその一人であり、ジーンは破壊活動を続けたが本当は誰よりも自身を救い出して欲しかったのであり、死によってしか彼女を安らぎへ連れて行けないことを理解していたウルヴァリンが、自身の能力によってジーンを殺す役目を果たしたというのは、これはなんと美しいワンシーンだろうかとここでも涙が溢れてしまった。ジーンがウルヴァリンによって亡くなる時の、あの目を優しく閉じて微笑む顔は、彼女が苦しみから解放されて安らぎを得たこと、しかし死ぬことしか道が無かったという悲しみを見事に表現している。彼女の心情や行動というのは、現代における非行に走る子供達や犯罪者達の潜在意識にも繋がるものがあるのだろうか。
そして、この映画で私が最も素晴らしいと感じた本作の構成要素は、ジョン・パウエル氏が作曲を務めた劇中音楽である。他のシリーズとは違い、オーケストラの重厚さや旋律、またコーラスが非常に感情的で心に深く突き刺さった。特に物語中盤のチャールズの死から葬儀、そしてラストシーンのジーンの怒りからジーンの死そしてエンドロールまでの音楽は、彼を天才と呼ぶ他は無く、チャールズの哀しみと全ての物事への達観、またジーンとウルヴァリンの苦しみや愛の混じり合いがなんとも美しく且つ深く響いていて、言葉では表せない程にメロディが美しかった。私はもう1カ月、毎日ファイナル・ディシジョンのサウンドトラックを聴いているのだが、あまりの音楽の美しさに日々感動を思い出せることに感謝するばかりだ。
続いて本作において気になった点であるが、列挙するとすれば、
・サイクロップスの死とミスティークの人間化、ローグの退校あっけなさすぎる!
・X-MEN、X-MEN2に引き続きもう少しウルヴァリンとジーンの恋心の推移を描写して欲しかった
・続編を作って欲しすぎる!マグニートー!チャールズ!
くらいであろうか。どれも他の方々のラストディシジョンレビューにも書かれていることと同じなので私はまとめるだけにする。といっても、本当に大好きな大好きな映画なので、全部自分の中でうまく納得出来るから気になった点やマイナスな点は全く無いといってもいい。
初めて鑑賞した小学校時代から10年以上の月日が経って、こんなにも素晴らしい作品に再会出来たことをこころから神に感謝したい。将来は絶対にミュータントになりたい。