コラテラル・ダメージのレビュー・感想・評価
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自由か死か
火事場の糞力?!
仕方のない犠牲だ そう頷いたとき、私たちはテロリストに屈したことになるのです
コラテラルダメージとは
もともとは軍事用語からきた言葉だそうです
「仕方のない犠牲」という台詞が劇中にあります
軍が敵を攻撃するとき、その周囲にある民間人や民間施設に被害がでるときその言葉が用いられるということです
「解放軍」の理解者という人物がテレビのインタビューでそのワードを使います
最近このワードをよく耳にします
ウクライナ戦争で、ロシアがこのワードを頻繁に使うのです
曰わく「軍事目標を攻撃して民間人にも死傷者がでたが、作戦上仕方のない犠牲だ」と
劇中のシュワルツェネッガーよろしく、ロシア軍司令部に殴り込みに行きたくなります
本作の公開は米国は2002年2月
当初の予定は2001年10月5日だったそうです
なぜ延期になったのでしょうか?
もちろん911が公開直前に発生したからです
本作は殆ど911を予告しています
なぜテロが起きるのかそのメカニズムまで解き明かしています
そしてそのテロは遠い外国で起きるのではなく、いつアメリカ国内で起きてもおかしくないのだという内容なのです
そのテロとは爆弾による単なる無差別殺人に止まらず、ついには政府の中枢にピンポイントで攻撃を仕掛けて来るだろうというものです
国務省ビルへの攻撃は、911ではペンタゴンへの攻撃でそのまま現実になっているのです
しかも主人公は消防隊の隊長
911で必死に奮闘して英雄とたたえられたプロフェッショナルなのです
本作の劇場公開が3週間前に迫り、そろそろ試写会や予告編のプロモーションが始まろうという矢先に911が起こったのです
本作の内容はあまりにも911を連想させる内容そのものです
監督も撮影スタッフも、シュワルツェネッガーはじめ出演者一同も、何より映画会社も腰を抜かした事と思います
とても公開できません
日本でも311の東日本大震災のあとしばらくは津波の映像が含まれる作品は上映も放映も自粛に追い込まれました
本作も、爆弾テロシーンをマイルドな映像表現になるように手を入れるなどして、お蔵入りになるのをなんとか回避して、やっとのことで4ヵ月の延期ながら公開にこぎつけたのです
日本なら無理だったと思います
そのままお蔵入りになったでしょう
幻の作品となって数年後にDVD で発売できればマシな方でしょう
主演がシュワルツェネッガーなのですから、主人公が武器を持たない消防士であっても、そんなアホなというぐらいの超人的な活躍をしてテロリストどもをぶちのめすのは当然です
これはもちろん娯楽を求めて彼のアクションを観にくる観客へのお約束です
しかし監督が撮ろうとしたのは、そんな凡百のアクション映画ではなく、米国を本格的なテロリストが攻撃を仕掛けてくるのはもうすぐだ
なぜ攻撃してくるのか?
どのような連中なのか?
当局の対応はどうなのか?
それを描くことが本作の目的であり、
テーマなのです
つまりシュワルツェネッガーのアクションは、苦い薬を飲むための甘い糖衣に過ぎないのです
そこのところを理解して本作を見ないとならないと思います
もし本作が911の前に公開されていたなら?
序盤の爆弾テロはもっと生々しくショッキングなものであったろうと思います
本当かどうか分かりませんが、ハイジャックシーンまであったそうです
神映画になっていたかも知れません
しかし、これもまた映画の神様のご意志だったのでしょう
テロで殺されても、仕方のない犠牲?
民間人が戦争で、殺されても仕方のない犠牲?
経済的困窮者を大勢つくりだしている宗教団体に協力していた大物政治家なのだから暗殺されても、仕方のない犠牲?
仕方のない犠牲なんか
ありはしません
爆弾テロも、銃撃テロも、テロと同義のような侵略戦争も
それを起こしたテロリストにとっては、被害者を全部仕方のない犠牲だと一言で片付けるのです
仕方のない犠牲だ
そう頷いたとき、私たちがテロリストに屈したことになるのです
シュワルツネッガーの映画
国家の目的のために多少の犠牲はしょうがない?
考えさせられるテーマだったが、やっぱりそこはシュワちゃん映画でもありました
シュワちゃん映画らしからぬ題材でありながらも、良くも悪くも終わってみればシュワちゃん映画に落ち着いたって感じでしたかね。
まあ個人的にはシュワちゃん映画はこれで良いと思ってます、そもそもシュワちゃんの活躍を見たいが為に鑑賞した映画なので、シュワちゃんがシュワちゃんしてるだけでそれなりの満足感はあったりするもので。
ただテーマがテーマだけに、コトが終わって、いやぁ~今回もカッコ良かったよシュワちゃん!で済む映画ではないのもまた事実・・・シュワちゃん映画でありながら、爽快感はあまり得られない作品でしたね。
9.11以降も復讐が復讐を生む負の連鎖は世界各地で続いていますから、何かこうやりきれないと言うか、見ていて虚無感で一杯になってしまう作品でした。
とは言え、まあやり切れない映画はやり切れない映画でしたけど、結局シュワちゃんがシュワちゃんしてましたからねぇ、メッセージ性とシュワちゃんらしさ、両方完璧に描けていれば一番良かったのですが、中途半端になってしまった辺りはちょっと勿体無かったかもしれませんね。
リアルな題材なんだけど、結局リアルさは皆無なアクション映画って感じでしたので(苦笑)
普通死にますよ、あんな無謀な行動・・・。
敵地に一人乗り込んで、いろいろとありながらも、途中普通に移動できている姿がかなり違和感ありありで、何だかなぁ~と思ってしまいました。
ところで作品を見ている時には気付かなかったのですが、シュワちゃんは一切銃器類を使わないでテロリストに立ち向かっていたんですね。
あくまで一人の消防士として、家族を愛する普通の男として描いたと。
でも、まあ消防士としての知識を駆使して戦う設定は面白かったのですが、ただの消防士にしては無双過ぎたのはやっぱりシュワちゃん映画って感じでしたよね、ありえなさすぎて笑っちゃいました、けど何だかんだでこう言うの嫌いではないんですけどね。
ジョン・タトゥーロとジョン・レグイザモを見れたのも妙に嬉しかったなぁ、使い方はやや微妙でしたけど、あんな顛末も彼らならありと言えばありか。
あとテロリストのリーダーの奥さんもいいキャラしてましたね、ある意味そこはシュワちゃん映画らしくなくてリアルだったかも。
テロリスト側にも様々な人生模様がある、テロを起こす理由もある、しかし仕方のない犠牲からまた復讐が生まれる、まさしく堂々巡り・・・話的には何かと考えさせられる話でしたし、やや衰えを見せた頃とは言えシュワちゃんのアクションも存分に堪能させてもらいました、が・・・良質な映画とは言い難い雑さが少々気になってしまう映画でもありましたかね。
多面的な視点から描かれていた
総合:65点
ストーリー:65
キャスト:70
演出:70
ビジュアル:70
音楽:65
一介の消防士がいきなり中南米のゲリラ活動地域で特殊部隊並みの活躍をしてしまうのはやりすぎだろう。だがテロリストとアメリカとシュワちゃんのそれぞれの立場が描かれていて、テロリストはアメリカに恨みを持っていたり、利益のために冷酷に判断をしたりするCIAがいたり、アメリカが一方的にいい国に描かれていないのは興味深い。ゲリラやテロリスト目線での話も描かれる。そうかといってテロを黙って見逃すわけにもいかない。単純な活劇にするには主題が重かったり、その主題のわりに物語に無理があったりするが、そこそこ楽しめました。
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