ソードフィッシュ : 特集
2001年、VFX映画業界大変貌
VFX映画に造詣の深いジャーナリスト、大口孝之氏が、今、大きく変わりつつあるVFXワールドをリポートする大特集! 前回に続いて今回も、2001年のVFX映画界の変化をチェック。この頃、元気なスタジオはどこだ?
第4回:メジャースタジオのVFXプロの現状は?
大口孝之
■■■■■今後注目なのは、オセアニアのプロダクションだ!
ALL RIGHTS RESERVED前回紹介したデジタル・ドメイン同様、監督自身が経営するVFXプロダクションとして忘れてならないのは、ピーター・ジャクソンがニュージーランドに設立したWETAデジタルとWETAワークショップだ。
これまでにも、「さまよう魂たち」(96)や「コンタクト」(97)などを手掛けてきたが、何より注目されているのが超大作「ロード・オブ・ザ・リング」3部作だ。2億7000万ドル(約325億円)という莫大な予算をかけて製作中のこの作品には、WETA社による凄まじい規模と高度な水準のVFXがふんだんに使用されている。特に、オーク、トロル、バルログといったクリーチャーの表現が素晴らしい。
また隣のオーストラリアでも、フォックス・スタジオの建設に伴い、ハリウッド映画の製作が頻繁に行われる傾向にある。当然、地元のVFXプロダクションも活況ある状態にあり、「ムーラン・ルージュ」(01)を手掛けたアニマルロジックなど、今後、オセアニアはもっとも注目すべき地域といえるだろう。
■■■■■ソニーピクチャーズ・イメージワークスは順調!
それでは、メジャースタジオ系のVFXプロダクションはどうだろう。まずは、ロサンゼルス最大の設備と、スーパースター級VFXスーパーバイザーをズラリと揃えたソニーピクチャーズ傘下のソニーピクチャーズ・イメージワークス(SPI)。現在、ロブ・レガートをVFXスーパーバイザーとして「ハリー・ポッターと賢者の石」をメインで手掛けている。そして、来年夏公開に向けて「スパイダーマン」(02)が、ジョン・ダイクストラの指揮の元で製作が進められている。また同時に「スチュアート・リトル2」(02)も作られている。親会社のソニーピクチャーズは今一つ大ヒット作に恵まれていないが、SPI自体は、順風満帆と言えよう。
■■■■■ディズニーは新分野への進出を計画中。巻き返しなるか?
ディズニーは、傘下にVFXスタジオのザ・シークレット・ラボ(TSL)を所有している。これは、96年に買収したドリーム・クエスト・イメージズ(DQI)と、「ダイナソー」(00)を製作したデジタル・スタジオを99年の11月に統合させた組織。
だがその後は、「102」(00)を手掛けた程度で、不調が続く。まず、参加する予定だった「パール・ハーバー」の仕事はILMに持って行かれた。また、「ダイナソー」に続く長編3DCG作品として計画されていた「Wild Life」が中止になり、外部からの受注も大幅に減少。そして、ドラゴンによって支配された世界を描くタッチストーン作品「Reign of Fire」(02)と、ワーナー・ブラザーズのコメディ「Down and Under」を最後の作品として、TSLの閉鎖が決まった。スタッフ的には、「ダイナソー」のメンバーは長編アニメ部門であるディズニー・フィーチャー・アニメーションに吸収され、旧DQIメンバーは解雇されてしまった。そのフィーチャー・アニメーションも、企画に苦戦している様子がうかがえる。初のSFアドベンチャーに挑戦した「アトランティス/失われた帝国」(01)が米国で今一つの興行成績だったように、いわゆるディズニースタイルからの脱皮には成功していないのだ。現在は、来年米国公開予定のエイリアン犬と少女の交流を描いた「Lilo and Stitch」や、宇宙版宝島の「Treasure Planet」などを進行させている。おとぎ話やミュージカル・ファンタジーからの脱皮を指向していることが感じ取れる企画内容だ。
そこで今、もっとも新たな展開として期待されているのが、アイマックスなどの大型映像分野への進出だ。「ファンタジア2000」(99)での成功をきっかけに、「美女と野獣」(91)と「アラジン」(92)、「ライオン・キング」(94)のラージ・スクリーン・フォーマット版が製作され、「美女と野獣」は2002年元旦から新宿アイマックス・シアターほかでの公開が決定している。作業は、ディズニー・フィーチャー・アニメーションで画像やエフェクトの修正と追加場面を加えたCAPSデータをイマジカUSAに送り、65ミリ15パーフォレーションのフィルムにレコーディングするという手順で行われている。アニメ製作が、早くからフルデジタル化されていたディズニーだから可能になった手法と言えるだろう。
大型映像でのアニメーション・ビジネスが、ディズニーにどれだけの成功をもたらすかは未知数だが、新しいメディアに対して積極的に進出する同社の姿勢は評価されるべきだろう。DLP Cinemaプロジェクターを用いたデジタルシネマに対しても、メジャースタジオの中で最も積極的なのがディズニーである。
また契約プロダクションであるピクサ―・アニメーション・スタジオも、2年振りの新作3DCG作品「モンスターズ・インク」(01)が爆発的にヒットしていることもあり、今後の巻き返しに期待が持てる。
【次号予告】
次回はいよいよ最終回。スタジオごとに、VFX世界の全貌をチェック、VFXワールドの現在を総まとめだ。全米大ヒットが話題の「シュレック」を手がけたドリームワークスは、これからどうなる? そして、新たに注目のVFXプロはどこか?
特集
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