「アンブレイカブルマン」アンブレイカブル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アンブレイカブルマン
本作を公開時見た時と今見るとでは、感想も印象もだいぶ変わる。
公開時はやはり、『シックス・センス』に続くM・ナイト・シャマランの新作という事で、誰もが再び期待した。
賛否分かれたが、個人的には公開時からそう嫌いではない。
今見ると、そう、本作はズバリ、昨今映画界を席巻してるあのジャンルなのだ。
公開時はサスペンスにばかり気を取られていたが、改めて久し振りに見ると、しっかり“コミック”や“ヒーロー”などのワードが散りばめられている。
大規模な列車脱線事故が発生。
全員死亡かと思われたが、ただ一人の生存者が。
しかし、その男デヴィッドは、かすり傷一つ無い全くの無傷で…。
一体、何故…?
これまでにも思い当たる奇妙な事はあった。
デヴィッドは怪我をした事も病気になった事も一度も無い。
自分は何者…?
そんなデヴィッドの元に、あるメッセージが届けられる。
送り主は、漫画コレクターのイライジャ。
彼は、些細な転倒でさえ骨折してしまう体質であった。
彼は言う。
この世には、自分と対極の者が居る。特別な存在が…。
いわゆる“スーパーヒーロー”。
スーパーヒーローがこの世に実在していたら…?
それをヒーロー・アクション物としてではなく、サスペンス・ドラマとして描いたのがユニーク。
デヴィッドは平凡を画に描いたような男だ。
妻子あり。少々家庭関係は停滞。
物静かで真面目な性格。
そんな自分が特別な存在(=スーパーヒーロー)と言われても…。
全く自覚すら無い。
自覚したとしても、自分はどうしたらいいのか…?
苦悩/葛藤がじっくり描かれる。
とは言え、デヴィッドには特殊な能力が無きにしも有らず。
スタジアムの警備員をしているが、不審者をいち早く察知出来る。
重量挙げでオリンピック選手以上の筋力を発揮。
また、犯罪者や犯罪を犯そうとする者に触れると、それが分かり、被害者や助けを求める声が聞こえる。
デヴィッドは遂に意を決する。
昨今流行りのヒーロー映画のような迫力の大活躍ではとてもとても無いが、人知れず、苦しんでる人たちを助け始める。
ヒーロー映画のあるある、ヒーローとしての目覚めは異色の描かれ方ながらそつなく。
リアル・ヒーロー物だが、根底はヒーロー物をしっかり踏襲している。
ブルース・ウィリスが抑えた演技で、ヒーローである平凡な男を好演。こうして見ると、彼も単なるタフガイ・スターではなく、実力派である事を魅せてくれる。
サミュエル・L・ジャクソンはさすがの巧演。実は彼こそ…。
ヒーローには相棒が付き物。デヴィッドの息子も好助演。
淡々と静かな作風ではあるが、謎とサスペンスの引き込ませる語り口。
決して期待外れ作ではない。『シックス・センス』とは全くの別物なのだから。
この後不調になるが、寧ろシャマランが最も脂の乗っていた時期。
この頃から“ユニバース”を想定していたとしたら、改めて遂にのその実現に頭が垂れる。
ヒーローには相棒と、そしてヴィランが必須。
本作に於けるヴィランは…?
ヒーローを探す為、凄惨な事件を起こした哀れで愚かなヴィラン“ミスター・ガラス”、それは…。
本作を見るのは随分と久し振り。
所々覚えていたり、忘れていたり。
『スプリット』も併せて再見予定で、これで『ミスター・ガラス』を面白く見れそうだ。