「共産主義の制約の下で、ささやかな社会批判」子供たちの王様 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
共産主義の制約の下で、ささやかな社会批判
総合:65点
ストーリー: 65
キャスト: 70
演出: 65
ビジュアル: 75
音楽: 10
とてものどかで美しい風景だが、なんとなく儚さや悲しさが漂う。それは文化革命で人々の自由や夢が奪われ、教科書も揃えられない貧困の中で生徒に満足な教育も与えられないのに、せめて少しでもまともな授業をしようとすることすら否定されるからだろうか。竹か木材を並べただけの隙間だらけ穴だらけの壁にはガラスもなく、当然のごとく電気も水道もない主人公が住むことになった家は、数百年前となんら変わらないものだろう。20世紀に入っても昔と変わることが出来ずにいるのに、より良い物を求める努力すら否定されてしまう不条理がある。制作された1987年といえばまだ天安門事件の前のことであり、おおっぴらに共産主義と毛沢東思想を否定することが出来なかったのではないかと想像する。もっともそれは今でもたいして変わりがないのだろうが、その制約の中で人々の貧困と打ち砕かれた希望に加えて小さな真実をかろうじて描いていた。中国から発信できるささやかな社会批判だろうか。
作品は科白が少なくて何を考えているのか何が起きているのかを考える間(ま)がある一方、時々その間の多さと大きさにとまどうことがあった。この演出には時々退屈さも感じた。
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