テッセラクト : インタビュー
トム・クルーズがリメイク権を獲得した「the EYE【アイ】」や「レイン」で世界的に注目されるパン兄弟の兄、オキサイド・パンが、アレックス・ガーランドの小説を映画化した「テッセラクト」。香港出身でタイを拠点にする監督が、映像化不可能と言われた原作に対する挑戦や、英語主体で国際マーケットを意識した本作への取り組みについて語った。
オキサイド・パン監督インタビュー
「今までにない、新しい映画にするということを目指したんだ」
編集部
――原作を最初に読んだ時の印象はいかがでしたか?
「映画化不可能と言われていたけど、確かにその通りだと思ったよ。これを映画にするのはとても困難だとね。ただ、原作者であるアレックス・ガーランドの意図したコンセプトは自分なりに理解したつもりだし、アレックスともよく話し合い、原作のもつメッセージを残しつつ、映画は映画としてストーリーを変えるということにしたんだ」
――バンコクの街を縦横無尽に走ったり、感情と混同するようなある描写の連続などが、刺激的で印象に残りました。
「自分が初めてバンコクに来た時、とても混乱した感情を持ち、その魅力に惹かれたんだ。この感覚が、映画の中でイギリス人のショーンやローザが初めてタイへ来た時の不安な気持ちに通じるんだ。外国人がタイに来て覚えるある種の興奮や神経質になる感情を、映画の中で描くことに力を注いだし、同時に自信をもって演出できるポイントだった」
――ジョナサン・リース・マイヤーズをはじめとする国際的なキャストに関して、良い選択ができたと思いますか? また、演出する上で重要視したポイントは?
「撮影に入る前からキャスティングには自信をもって臨んだけど、みんな適役だったと今でも自信を持ってるよ。演出する上で気をつけたポイントは、あまり台本に固執しないで、自分のありのままの感情を出して欲しいということ。それは、“異邦人”であるというショーンの状況が、演じているジョナサンの状況と同じだからね。その状況にある自分の感情を自然に出して欲しいと頼んだよ。例えば、外国人が何か事件があってタイの警察を呼んでも安心できない、といった感情の表現だよ」
――今回の撮影で一番刺激的だったことは?
「撮影やロケーションというより、今回の国際的規模のプロジェクト自体が刺激的だったよ」
――世界に向けて発信する作品ということで、特に意識や配慮したことは?
「演出的な面では、国際マーケットにアピールするために特別なことはしていない。出資の経緯などが既に国際的なプロジェクトになっていたというだけなんだ。イギリス人のキャストを使い、セリフの半分は英語だけれど、最も配慮したのは、タイ、イギリスそれぞれの観客が観た時に『これはタイの映画なのか? それともイリギスの映画なのか?』という疑問を持たないようにすることだね」
――今回の作品を作る上で参考にした映画は?
「特にないよ。なぜなら脚本を作る段階から、ストーリーにしてもスタイルにしても、自分が今まで撮った映画の中にもない新しい映画にするということを目指したからさ」