「キートンが見せる泣き笑い演技を見てこっちも泣き笑い」恋愛適齢期 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
キートンが見せる泣き笑い演技を見てこっちも泣き笑い
ダイアン・キートンの突然の訃報に接し、今一度再見してみた代表作・その2。
ニューヨーク、ロングアイランドにある高級住宅街、ハンプトンに居を構え、優雅な執筆活動に勤しんでいる劇作家のエリカが、娘から恋人と紹介された60代のレコード会社オーナー、ハリーと出会い、あろうことか、2人は恋に落ちていく。離婚経験ありで恋愛には臆病なエリカと、交際相手は30歳以下と決めているハリーが、そもそも埋めようがない距離感を少しずつ、探りながら埋めていこうとするプロセスは、まるで、人生を一周して恋愛適齢期に戻ったうぶな男女のよう。
大人のロマンティック・コメディというカテゴライズにこれほどハマる作品は少ない。成功の立役者はもちろん、エリカを演じるダイアン・キートンとハリーを演じるジャック・ニコルソンが醸し出す芳醇なケミストリー。初めてのベッドイン、PCのチャットを使っての会話、等々、見どころはふんだんにあるけれど、号泣しながらPCの前に座り、恋の痛手を文字に替えていくキートンが見せる泣き笑いの演技は、追悼映像にも使われている代表的ショット。それを見ながら泣き笑いしてしまうのはこっちなのだが。
キートンがいなくなった今、益々、ロマコメ、コメディエンヌという言葉が死語になっていく。同じ危機感を持っている映画ファンは多いのではないだろうか。
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