セブンソード : インタビュー
79年の長編劇場映画デビュー以来、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」のようなカンフーから、ワイヤーを駆使したSFアクション、コメディまで、ありとあらゆる作品を手がけてきた香港映画界の重鎮ツイ・ハーク監督が、その集大成として作り上げた武侠アクション大作「セブンソード」。公開を前に来日したツイ・ハーク監督、主演のドニー・イェン、レオン・ライにインタビューした。(聞き手:編集部)
ツイ・ハーク監督 インタビュー
「これを皮切りに、新しい武侠映画をたくさん作りたいね」
――今回、やはり黒澤明の「七人の侍」を意識したのでしょうか?
「私は黒澤明監督をとても尊敬しています。ですが、黒澤監督の『七人の侍』はあまりにも完成度が高いので、あまり意識しないように作りましたが、一応オマージュを捧げたつもりです(笑)。やはり、あの境地っていうのはなかなか達成できるものではないと思いますね」
――今回、膨大な量のフィルムを回したと思いますが、最も撮りたかったシーンはどこでしょうか?
「7人の剣士が皇帝に会うために、広大な荒野を馬を走らせ、都に向かい、それを残った子供たちが走って追いかけるシーンがありますが、あのラストシーンが一番好きなんです。なぜかというと、あそこには人間の未来への希望と、人が集まって力を合わせれば何かを成し遂げられるという力を感じることが出来るからです。
それから武侠映画というのは、女性の心理を描いた作品、シーン(場面)が少ないと思いますが、今回は2人の女性が川べりで語り合うシーンがありました。あのシーンは片方が韓国語、片方が中国語と、本来であるならば、心を通わせることが無いようなシチュエーションなのですが、あの2人は同時に1人の男を愛しており、その愛によって、図らずも心を通わせてしまうという微妙な心の動きが表現されていて、とても好きですね」
――“七剣”が重要なモチーフとなっていることで、7種類のデザイン・特性のある剣が登場しますが、それぞれどんな個性を際立たせようと思いましたか?
「非常にはっきりとしたコンセプトが7つの剣それぞれにあるのですが、今までの武侠映画には、剣の形は違っていても、それを使う人間のアクションは同じということが多々ありました。だから、今回は『それだけはやるまい』と思って、撮影したのです。見た目だけではなく効能も、はっきり際立たせたいと思いました。今回はドニー・イェンの使う一番強く優れた剣をはじめに決めて、あとは順々に違う効能、見た目の違う剣をデザインしていきました。またそれと同時に、剣とその剣を使う人物にも気を配りました。『なぜ、この剣は、この人によって使われているのか?』という理由もしっかりと表現しました」
――これまでいくつもの武侠映画を作っていますが、、今回の「セブンソード」は監督ご自身の中でどのように位置づけられますか?
「現在、世界中から注目され、世界のアクション映画に大きな影響を与えているアジア映画界が置かれている、この状況の中で、今までと違う武侠映画を撮るということが今回のチャレンジでした。同じことを繰り返していたら駄目なんです。子供の頃から、武侠映画に魅せられ、やってみたいと思うアイデアは多く持っていますが、今回の作品1本で、すべてをフィルムに収めることは出来ませんでした。今は、この『セブンソード』を皮切りに、新しい武侠映画を数多く作り、やってみたいアイデアを出来るだけ多く使えたらと思っています」
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