「これは未来から現在へのタイムトラベル」恋人までの距離(ディスタンス) 暇さんの映画レビュー(感想・評価)
これは未来から現在へのタイムトラベル
若い頃失ったかもしれない何かを探す旅。3部作を見て、ここへ戻ってきて、この台詞に心を砕かれた。私はこの映画が大好き。あの時の私の心を救った映画。
電車で出会った男女が一晩会話を続けるだけの映画。確実にお互い惹かれているのに、肝心な事は何も聞けぬまま夜は明け別れの時に。2人で誓った"紳士らしさ"を捨て去ったラストシーンは人間味に溢れていた。
普段から人生とか愛とか神とか考えてる人間に響く作品だと思う。答えのない、もしくは人間の数だけ答えがあるようなことについてずっと聞いたり話したり出来るのはこれ以上ないくらい幸せだったりする。
一定の人からするとこれは他に類を見ない、最上級の恋愛映画だったんじゃないかな。
ここからは考え方に共感した話。セリーヌは女性的思考、ジェシーは男性的思考に寄っている事が見て取れる。私はセリーヌの生き方や考え方に深く賛同してしまった。例えば占い師のシーン。
セリーヌはきっと、あの占い師の答えを気に入っていたのだと思う。しかしジェシーは占い師を嘲笑した。初めこそ同じように笑っていたセリーヌだが、後になって子供のようだったとジェシーを叱る。
私はこれを"自立した強い女になることばかりを望んでいた"という彼女の心が強く現れたワンシーンだと解釈した。現に私も同じことをずっと望んでいるし、腑に落ちなかった出来事を後で納得出来ず掘り返す癖も理解出来る。
優しく協力的で反対をしない親の元で育つと、反発するのはかえって難しい。セリーヌはこれを親切ぶった押し付けと呼ぶ。彼女は所謂普通の家庭で愛されて育ったのだ。これは正しく愛を与えられた子供の悩みの種であり反発である。ここにも、強い自立心を感じる。
しかし彼女はずっと人と人の間にあるものを信じている。愛や、神や、相手を思う心や…。嫌いでいたいものと無自覚に信仰しているものはイコールだったりする。悲しいことに。
2025/2/26