「スミスがいっぱいコレクション。 広げた風呂敷を強引に畳んだ感はあるが、まぁ終わりよければ全てよしっ!!」マトリックス レボリューションズ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
スミスがいっぱいコレクション。 広げた風呂敷を強引に畳んだ感はあるが、まぁ終わりよければ全てよしっ!!
ディストピアと化した現実世界と仮想現実世界「マトリックス」、2つの世界を舞台に繰り広げられる、人間と機械の戦いを描いたSFアクション『マトリックス』シリーズの第3作。
機械の大軍が「ザイオン」に迫る中、謎の昏睡状態に陥ってしまったネオ。彼を目覚めさせるため、モーフィアスとトリニティーは預言者の下へ赴く。
「マトリックス」内では依然としてエージェント・スミスが自らの分身を生み出し続けており、もはや機械にも彼を制御することは不可能になっていた…。
◯キャスト
ネオ…キアヌ・リーヴス。
モーフィアス…ローレンス・フィッシュバーン。
『マトリックス』3部作、遂に完結。機械と人間による長きに渡る戦いに、遂に終止符が打たれた!…のか?
広げに広げた風呂敷を、多少強引にでもなんとか畳んだという印象である。衒学的なセリフで煙に巻こうとしているが、とどのつまりは「俺がスミスを倒しますから、人間たちは見逃してクレメンスッ!」という談合エンド。いや、いきなり出て来たそのおっきな顔の人誰っ!?
まるでアニメのような仰々しい映像を生み出すSFX、通称「バレットタイム」を駆使したアクションシーンが魅力のこのシリーズ。しかし、本作では現実世界「ザイオン」での決戦に焦点が置かれているため、このスローモーションアクションの出番が少なめになっている。
正直、これが本作1番の不満点。ザイオンでのバトルシーンは見応えがあるっちゃあるのだが、なんかどっかで観たことある感じがする…というかぶっちゃけ、ジェームズ・キャメロンの二番煎じである。それ『ターミネーター』(1984)とか『エイリアン2』(1986)とかで観たわ。
『マトリックス』シリーズに求めているのは仮想現実世界でのトンチキなカンフーアクションなのであって、ハードSFチックなミリタリーアクションなんて全然観たくない。
第一、敵のデザインに色気がないんですよね。巨大なドリルロボはカッコ良かったけど、それ以外はあのタコ型ロボしか出てこないじゃん。色々なバリエーションがいるのならともかく、ほぼ1種類の敵しか出てこないんだからそりゃ飽きるよ。ロケーションも変わり映えしないし、この大戦争にはもう少しアイデアが必要だったと思う。
終盤までガッカリな展開が続く。が、クライマックスでのvsエージェント・スミス戦は最高っっ!!このシーンだけでお釣りがくると言っても過言ではない、これぞ『マトリックス』な名勝負が繰り広げられる。
2人の殴り合いに全人類の命運が懸かるという『ドラゴンボール』も真っ青なトンデモ展開だが、それに納得のいく理由をつけるための悪足掻きこそがラストバトルまでの100分間であったのだと思う。「そんなんいいからずっとスミスと戦っててくれ」と思わん事もないが、まぁ長い助走があったからこそ雨中の決闘が盛り上がった訳だし、退屈なキャメロンごっこも必要だったのか疑問な駅のホームでのやり取りもネオに宿った不思議なスーパーパワーも機械の王様との談合も、万事オーケーと言う事にしてしまいましょう。終わりよければ全てよしっ!
3部作通して思うのは、この物語はエージェント・スミスがあってこそだという事である。
救世主として覚醒するにつれ、どんどん人間味が失われていくネオ。それと反比例するかのように、スミスがどんどん人間臭くなってゆくのが面白い。クライマックスなんて、笑ったり怒ったり怖がったりといった人間的な感情が表れているのはスミスだけ。どっちが機械なんだか全然わからない。
機械にも人間的な感情は宿るのか、と言うのが本シリーズの論旨。つまり、「自分とは異なるコミュニティの人々にも想像力を働かせましょう」と言う、複雑なセクシャリティを持つウォシャウスキー姉妹らしいテーマを説いているのである。
これをプログラムにも子供が居て云々、なんて形でやられると「そんなアホなっ💦」と思ってしまうが、スミスがヤッターッ!!とか悔しいーーッ!!とか喜怒哀楽を爆発させている姿を見ると「うーん、確かに機械にも色々あるよなぁ…」なんて思えてくるから不思議である。
何はともあれ、見事な顔芸とアクションを披露してみせたヒューゴ・ウィーヴィングこそ影のMVP。彼がいなかったら、このシリーズはここまで愛されなかった事だろう。
人類の原罪を一身に背負い、その命を捧げたネオ。某大工の息子は死の3日後に蘇ったと言うが、果たしてネオもまた復活するのだろうか?まさかの続編『レザレクションズ』(2021)にて、彼のその後を確かめたいと思います!