劇場公開日 2006年1月14日

「観たかった度○鑑賞後の満足度○ イギリスはやはり階級社会だ。その中で“愛”“結婚”“プライド”“偏見”がどう作用しているか。狭い世界の中でこれらを掘り下げるジェーン・オースティン作品は実は深い?」プライドと偏見 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5観たかった度○鑑賞後の満足度○ イギリスはやはり階級社会だ。その中で“愛”“結婚”“プライド”“偏見”がどう作用しているか。狭い世界の中でこれらを掘り下げるジェーン・オースティン作品は実は深い?

2023年7月30日
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鑑賞方法:DVD/BD

①BBCのTVシリーズ『高慢と偏見』(1995年版)を偶々観たら大変面白かったので(終盤ちょっとはしょり過ぎだけど)、今まで何故か敬遠していた本作を観てみようと思った。
何故か敬遠していたのは恐らく主演がキーラ・ナイトレイだったからと思う。どうも顔の下半分の印象がいつもふてくされている(ブー垂れている)ようで(多分、口がやや大きいのとやや受け口気味だからだと思うが)、あまり好きな顔じゃない。あくまで私の主観ですけど。
②TVシリーズは尺が長い分細かい部分まで描き込めるが、映画は二時間前後に納めなくてはならないので、どうしてもダイジェスト版みたいにならざるを得ないが、よく纏まっていたと思うし、演出もしっかりしている。映画だけあって舞踏会シーンもスケールが大きく衣裳や美術も金がかかっていてすごい。
イングランドの田園風景の美しさの描写はどっこいどっこいだが、エリザベスがミスター・ダーシーの屋敷を初めて観て感動するシーンは、屋敷の見せ方はTV版のほうが上手かったな。
③だから、あとは役者陣の比較となってしまう。
本作の弱みは男優陣がパパ役のドナルド・サザーランド以外は存在感が薄いという点。
まあ、上記TV版でミスター・ダーシーを実に上手く魅力的に演じたコリン・ファースの後では、誰がミスター・ダーシーを演じても劣って見えるのは仕方ないけど。
初めてエリザベスを見たときに忽ち惹かれたことを目の演技だけで表現。いつもは冷静なのに自分を抑えきれずエリザベスに恋心を打ち明けるところ。自分の屋敷で偶然エリザベスと邂逅したときの(しかも自分は上半身は濡れたシャツ一枚という姿。イギリス女性の間では放映当時センセーションになったシーン。『リトル・マーメイド』でもエリック王子が上半身濡れたシャツ一枚の姿に世界の乙女たちが大バズったが、女性には必殺の格好なのかしら)、少年のようにはにかんだ表情。エリザベスと心が通いだしてからの目の演技。コリン・ファースの恋する男の演技はまことに上手い。(TV映画のレビューを書く場所を知らないので、ついでに書いてます。)
それに比べると、本作のマシュー・マクファディンの演技は物足りない。あんまり美男子でもないし(これは個人の好みですが)。
後の男優陣も殆んど記憶に残らない。
④女優陣では、長女役のロザモンド・パイクに違和感を感じる(ロザモンド・パイクは好きな女優さんなんてすけども)。
長女のジェーンは姉妹の中で最も心優しくお人好しで人の悪口など言わない人物と設定されているが、ロザモンド・パイク演じるジェーンからそれが感じ取れない。個性が現代的過ぎるのかもしれないし、『ゴーン・ガール』の印象が強すぎるのかも知れない。
キーラ・ナイトレイにしても、自分の属する社会の枠を分かっていて、でもその中で出来るだけ自分の判断・意思で生きようとする聡明なエリザベス、というより現代の女性が18世紀に迷い込んだみたいな印象。
キャリー・マリガンは本作がデビュー作だったんですね。
⑤ラスト、エリザベスとミスター・ダーシーとの結婚についてエリザベスが父親の承諾を得るシーンはTV版では無かったので嬉しかったし、ドナルド・サザーランドの好演もあり映画を締め括る良いシーンであった。TV版の様に結婚式のシーンではなく、このシーンで終わらせたのも上手いと思う。
ただ、「嫌いだったんじゃなかったのかね?」という父親の問いにエリザベスは「私が間違っていたんです。私もミスター・ダーシーに偏見を持っていたし、彼も私に偏見を持っていました。」と答えたが、彼らが結ばれるまでには偏見だけではない色んな誤解や障害等があったわけで、単に“偏見”だけを理由にしたのは話をそこの浅いものにしてしまったようで残念。
⑥次は、これも名作と言われているローレンス・オリヴィエとグリア・ガースンの『高慢と偏見』を観ましょう。
⑦しかし、『嵐が丘』でヒースクリフとキャシーとのひりつくような恋を描いたエミリー・ブロンテも、ほぼ前作で愛と結婚ばかりを描いたジェーン・オースティンも生涯結婚しなかった(恋はしたらしい、早逝したこともあるだろうけど)のは興味深い。

もーさん