「怖さアップグレード」ポセイドン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
怖さアップグレード
言うまでもなく大ヒットした「ポセイドン・アドベンチャー(1972)」のリメイク版、プロットは知られているのでパニック・スペクタクルならではの迫力あるシーンを最新のVFX技術でアップグレードしたいと言うことでしょう。サバイバー達も入れ替えています。
パニックものではお約束の群像劇、映画の前半はそれぞれの人物像の紹介に時間をかけるのですが本作はすぐに悲劇が起こります。初期テイクではもっと長かったのですが試写の反応を観てテンポを上げたようです。大体は死んでしまうのでことさら感情移入させてどうするのとも言えるかもしれませんね。それにしてもパニック前の序章としてはあっけなさすぎ、海底地震の起きる様子など迫りくる恐怖の演出に少しは尺をさいても良かったでしょう。
実際に撮影中の怪我や事故も多かったようです、この手の映画では役者さんも大変ですね、映像からも過酷さが察せられます。
サバイバルの基本としてパニックにならないことと言われても難しい、船といっても小さな街くらいの規模だから船員の先導なくしては避難もままならない、その上、本作では天地がひっくり返っているのだから尚更です。アドベンチャーではリーダーはジーン・ハックマン扮するカリスマ牧師さん、こんな時は神のご加護にすがるしかないと言う意味では納得だし、まさに信ずる者は救われるわけですね。本作は元海軍や消防隊員だからサバイバル術に長けているだろうという設定は良いでしょうが脱出できたとするのはまさに奇跡の範疇だから、要は見せ所を人間性に置くのか、パニック・ムービーの怖さ、映像にかけるのかの思想の違い、どちらかといえば本作は後者なのでしょう。自殺願望の老人が生き残るのも運命の皮肉ですものね。
とにかく怖い映画、コロナ騒ぎもありましたし豪華客船の船旅も考え物、といっても幸か不幸かクルーズ船に乗れるほど裕福ではないので杞憂でしょう。